1票の格差の最高裁判決に思う

 

 昨年の参議院選挙に関する1票の格差についての最高裁判決が出た。
新聞各紙でスタンスが違い、社説で評論をしているところもあれば、
特に事実のみを伝えるところもあるという状況である。
 憲法判断に関することなので、国民に関心を持ってもらうように、
それなりに見解を示すべきであるとは思うが、意図的にスルーする社
もあるのだろう。


 参議院の1票の格差が3倍以上になっているのは、誰がみても平等では
ないと思うが、国会での是正への取り組みは、党利党略で進んでいない
というよりは、むしろ後退していると言ってもいいのではないだろうか。
 前々回より導入された合区への不満から、某政党の幹事長は、憲法改正
して各県から1議席選出するべきというようなことを言っているが、各県
から選出するという意味があるかどうかと言えば、参議院に関してはない
と思う。
 それ故に、最高裁違憲と言っているので、それにもかかわらず、改革
への議論をしない上に、議席増や合区により選出されない議員の救済的な
措置までしているのは問題だと思うが、最高裁はそういった事情を無視
して、合憲という判断をしているため、社説で批判が出てくるのは、ある
意味当然だと思う。


 衆議院と違って、参議院に各県ごとの代表的な要素をつける意味あいが
どこまであるのだろうか、米国の上院議員が各州から2名ずつ選ばれている
のは、まさに合衆国という州が基本の国家形態であるためで、それを踏ま
えた憲法になっているということだと思う。
 日本の場合、戦前は貴族院議員があったが、政府からの任命制であり
現在の参議院とは全く性格が異なるもので、特に地方代表ということでも
なかった。

 現在のような党利党略に走るようなら、参議院など無くして、1院制でも
いいようなものだが、まさに議員としての既得権を手放したくない人たち
が多いので、改革が進んでいないのだと思う。こういった状況なのに、日本
学術会議に既得権があるというようなことを言う議員がいるのを見ると、
よく言うものだと思ってしまう。


 それはさておき、合区が嫌ならブロック制にして、ブロック代表にすれ
ばいいのではないかという案もあるようだが、既得権を手放したくない人
からすれば、現状からの変更に抵抗があるようだ。
 行政改革トップダウンでできるが、国会の改革は話し合いでしか解決
しないため、多数派の政党がごねる限り前に進まないという状況だと思う。


 一部の住民は、ブロック制になると地方の意見が届かないというような
ことを言うが、国会議員がいないと地方の意見が届かないのか怪しいもの
で、政党が違っても全ての議員が地方を代表して意見を言っているかは疑問
だと思う。
 あたかも選挙で選ばれたから民意を反映しているようなことを言っている
国会議員がいるが、選挙区の圧倒的な多数で選ばれた訳ではなく、死票
なっている票も民意だとすれば、そういった奢りは捨てるべきだと思う。


 本来あるべきは、国会議員が選出されているいないにかかわらず、地方の
意見が直接届くような仕組みを構築すべきで、韓国の大統領府が直接意見を
受け付けているように、日本でもできないことはないだろう。
 行政改革で目安箱を設けたら、パンクしてしまったというようなことは
あるだろうが、多くの人から生の声が届くような仕組みがないと健全な民主
主義は育たたないと思う。