世の中鬼だらけ

今週のお題「鬼」

 

 鬼と言えば、最近は鬼滅の刃を連想するだろうが、子供の
頃は、お伽噺の桃太郎の鬼退治だった。

 桃から生まれた桃太郎が、鬼ヶ島に鬼退治に行くことに
なり、犬、猿、雉をお供に、黍団子を持っていくという話は
いろいろな解釈があり、鬼は悪い事もしていないのに、宝物
を奪ったのではないかという人もいる。
 鬼だからといって、鬼滅のように全てが人を食うということ
でもなさそうだ。

 次の子供の頃の鬼と言えば、やはり豆まきであろうか。一般
的には「鬼は外、福は内」だが、「福は内」しか言わない地方
もあるようで、必ずしも鬼は悪者というわけではなさそうだ。
 実際、秋田のなまはげは、子供に対して「悪い子はいねえか」
と親に代わって迫るが、家人に危害を加えるわけではない。
 むしろ、鬼を歓待している。


 中学生の頃、鬼頭さんという同級生がいて、自分の苗字を
嫌がっていたのを思い出す。鬼頭という苗字は、それほど珍
しい苗字ではないが、豆まきでからかわれたことでもあった
のだろうか。
 鬼頭は、鬼退治をしたことで賜ったという話があるので、
立派な武士の末裔なのかもしれないが、他にも鬼がつく名前
には、鬼束ちひろとか鬼塚タイガーといったものがあるので、
鬼がつく名は意外にポピュラーといえる。

 鬼は、日本ではポピュラーだが、英語で鬼に相当する言葉は
悪魔や妖怪的なものなので、あまり当てはまらない。
 そのうち、oniとして辞書に載るかどうかはわからないが、
鬼は必ずしも悪い者ではなく、むしろ人間の内面に潜むものが
具現化したものではないだろうか。 


 そういう意味では、周りには沢山の鬼がいる。よく言われる
ハラスメントは、やっている人間は意識していないかもしれ
ないが、被害者からすれば、相手には鬼にしか見えないだろう。
 つまり、セクハラ鬼、パワハラ鬼である。いじめをする子は
小鬼ということになる。

 鬼嫁とか鬼姑とか鬼監督とか言われる人は、必ずしも本心で
嫌がらせをしている訳ではなく、当然できなくてはいけないと
思っているため、厳しく当たっているだけなのかもしれないが、
傍から見れば鬼に見えるということだろう。

「渡る世間に鬼はなし」という諺をもじって、「渡る世間は鬼
ばかり」というテレビドラマが長く放送されたのも、それだけ、
世の中に鬼が溢れているということだろう。

「相手のことを鬼だと思う自分がすでに鬼なんだと、自分が鬼
でなかったら相手のことも鬼だと思わない」という意味を込めた
とプロデューサーが語っているのがよくわかる。


 自分が鬼になったことはないかと自問すると、仕事でせっぱ
つまった時は鬼になっているかもしれないし、家族からすれば
自分が鬼に見えていることがあったかもしれない。

 今は、できる事とできない事、した方がいい事としない方が
いい事が見えてきているため、傍からすると精気がないかも
しれないが、鬼になることもないと思う。

 それがいいかどうかは別として、鬼のいない我が家の節分は
「福は内」しか言わないことにしている。