赤電話の怪

今週のお題「怖い話」

 今から40年以上前の話。そのころ入っていた独身寮は、個室が割り当て
られてはいたものの、電話はついていなかった。従って、電話は管理人室
のところにかかり、管理人のオジサンが呼びだしで電話がかかってきた
ことをアナウンスして、各人が玄関の管理人室のところまで、走って行き
電話にでるような仕組みだった。

 但し、それとは別に、2階の中ほどに公衆電話(赤電話)が置いてあり、
外部へ電話をかけたい時は、十円玉を一杯もって電話をかけていた。
そのうち、誰かが赤電話に外から電話をかけて受けるようなことを始めた。
管理人にいちいち取り次いでもらうのが面倒なのと、個人的な話が管理人
に聞こえるのを嫌がったのかもしれない。
 

 そのうちに、誰かわからないが外から電話かけてきて、〇〇さんを呼んで
もらえませんかという輩が出てきた。当然のことながら、赤電話に電話番など
いないので、その赤電話の近くに部屋がある人間が出て、その部屋まで行って
電話がかかっていると伝えることになるのだが、必ずしも近くの部屋に人
がいる訳ではないので、気が付いた親切な人間が対応するということになる。

 私の部屋は、赤電話から二番目に近かったので、たまには出ることもあった。
その日は暑い日で、夜電話がかかって来たのに、誰も出ないので、私が電話を
取った。

 先方は、日本語ではなく、多分英語だったと思うが、早口で助けてくれと
いう。こちらも寝ぼけていたのか、間違い電話だと思ったので、ここは日本
だ。どこにかけているのかと言ったと思うが、先方はこちらの声が聞こえて
いないのか、相変わらず早口で、助けてくれというばかりだった。
 こちらは、どうしようもないので、電話を切ってしまったが、翌日、TVの
ニュースで、スペインのホテルで火事があり、多くの逃げ遅れた人がいたと
いうことを言っていた。
 国際電話が、赤電話にかかってくることはない筈だし、そんな筈はないと
思って、近くの部屋の住人にも、夜電話がかかってきたのを気づかなかった
か訊いてみたが、聞いてないと言う。
 結局、私が聞いたのは空耳なのか、心霊現象なのか、今もって気になって
いる。