福島原発処理水の放出に思う

 

 福島原発事故に関連した処理水の放出が、様々な影響を及ぼして
いる。私自身は、海への放出が仕方ないかなとは思っているが、昔から
これは、出来レースのようなものに感じている。


 原発事故の事後処理は、主として東京電力が担うことになっている
のだが、東京電力を破綻させなかったために、一企業として負う負担は
大き過ぎるものになっている。
 政府も、全く無視している訳ではないが、当事者意識がそれほどある
ようには思えない。
 処理水の問題は、以前から東京電力が、敷地の問題でタンク容量
が一杯になるため、海洋放出をしたいということを言っていた。
 本来、敷地の問題ならば、他に敷地を確保して、そこに運べばいい
だけなのだが、地元の反対があり、敷地の確保は一企業では難しいため、
海洋放出を言い出したのだと思う。

 
 海洋放出となれば、地元漁民の反対があるのだが、そこは地元の
了解があればいいということで、了解なしにはしないという口約束をして
先送りしてきたのだが、結局、タイムリミットで放出に踏み切ったということ
だと思う。
 もちろん、処理水の放射性物質であるトリチウムは、自然界にも存在
するし、濃度を低くすれば、既存の稼働している原発の処理水よりも低い
レベルなので、大騒ぎするほどのことはないのだが、つまるところ、根底に
あるのは、政府と東京電力に対する不信感以外の何物でもないと思う。


 これまでの処理水に関する対応を見てくると、汚染水が発生したため
とりあえず、タンクに貯めるということをしたのだが、タンクに貯めても放射性
物質が無くなる訳ではないので、除去システム(ALPS)を導入した。
 但し、このシステムを使用しても、トリチウムだけは取り除けないので、トリ
チウムを含む処理水をタンクに貯めるということになった。
 一方で、発生する汚染水は、雨水や地下水が影響しているということ
で、汚染水を減らすために巨額の費用をかけて凍土壁を構築したのだが、
想定ほどは汚染水が減らなかったということで、タンクが増え続けてきた。
 そして、今回の海洋放出止む無しという結論を政府が出して、強行した
ということだと思っている。


 これまでのプロセスを見れば、過去に実施してきた対策についての評価
をすることなく、処理水はトリチウムだけなので、薄めれば問題なく、国際
機関(IAEA)の評価ももらってますと言ってやり過ごそうとしている。
 トリチウムだけを見れば、問題ないように見えるが、問題の本質は、廃
炉処理全体にかかる問題を今後どのようにしていくのかという展望が、政
府と東京電力に無いため、対応が場当たり的になっていることではない
だろうか。


 そこへ、中国のように、政治的に処理水を汚染水として国民に宣伝し、
日本へ圧力をかけるような国が出てくるので、問題がややこしくなってくる。
 中国への対応は、毅然として撥ね付け、国内漁業者への支援を十分
にするしかないと思う。
 中国が輸入しないなら、自国の漁船も日本近海へ出漁することができ
ないし、中国国内の業者も困るところが出てくるのだから、ここは我慢比べ
しかない。


 いずれにしても、海洋放出へ踏み出した以上、これから先は全ての情報
をオープンにして、誰からも批判されることのないように対応するべきだと思う。
 原子力関連の政策は、素人が分かりにくいということもあり、情報の開示
が不十分なままに実行されてきていると感じるが、これが改まるかどうかだ。