何が悪いのか、誰が悪いのか

 今年のお盆は、行事も中止、帰省も自粛で様変わりではあるが、一部の県
で感染が拡大している以上、やむを得ない面はあると思う。
 ただ、それでも事情があって帰省する人の中には、自費でPCR検査を受け
てから帰る人もいるという。一方で、GOTOキャンペーンは、特にこれと
いった制約はなく、参加する宿泊施設などに対する規制はあるが、行く人に
ついては、これといった規制もないので、チグハグな感は否めない。

 

 感染者が急増している沖縄は、観光が重要な産業なので、観光客の自粛は
求めないものの、感染者を抑える術がないので、ジレンマに陥っているが、
これに対して政府が救済策を出しているようには見えない。
 多くの観光地を抱える県は、感染拡大は抑制したいが、さりとて観光客に
来ないでくれとは言えないので、悩んでいる。帰省にしても同様で、新盆
などで帰りたい人に帰るなとは言えないが、さりとて感染拡大につながら
ないという保証はないので、同じような悩みがある。

 

 こういった各県の共通の悩みに応えることが、政府の役割だと思うのだが、
一律に自粛は求めないが、こうすればいいという適切なアドバイスもなく、
各人の判断で適切に行動してくださいというばかりでは、仕方あるまい。

 政府の対策本部は、本部長が総理大臣、副本部長が官房長官厚生労働大臣
担当大臣という、形は内閣をあげてということだが、実態はリーダー不在の
無責任体制であるとしかいいようがない。

 現状の感染拡大を見ていながら、夏休みなのか行事が立て込んでいるのか
わからないが、具体的な対策の発信がないというのは、危機感がないだけで
なく、無責任体制だと思われる。

 そういう意味では、国会も同様で、現状は若年者や無症状・軽症者が多く
それほど深刻な状態ではないので、特別な対策案を検討する必要がないと
いう認識なのだろうか。国会で審議する内容がないと言っている人もいる
ようだが、法案が出て来たら審議するという受け身の国会運営、国会での
質問に真面に答えない内閣という国会運営を長く続けてきていて、感覚が
麻痺しているのだろうか。

 

 野党も政府を攻撃するだけでなく、具体的にどうしていくべきという提言
をして、政府に迫り、与党も政府まかせにするのでなく、党としてどのように
対処していくのかという方針が必要だと思うが、それができない。

 こんな程度の国会なら、国会議員の定数は大幅に減らして、その分の金で
有効な政策を立案できる第三者組織を作った方がいいと思う。新型コロナ
ウイルス対策だけでなく、経済振興財政再建など懸案する課題は多いのに
看板だけ架け替えて実がない議論をしているようでは、わが国の将来はない
と思う。

 現実を踏まえ、優先すべき課題と必要な条件を示して、それに向かって
進んでいくことをしないと、状況はますます悪くなっていくのではないか。
今までは、経済と政治は切り離して考え、政治がダメでも経済で何とかすれ
ば、回っていくと思っていたが、ここから先は経済を良くするなり、回して
いくためには、政治を変えていかないと難しいと思う。

 これまでは、多少できの悪い政治家がいても、柱になる企業があれば世の中
回っていくと思っていたかもしれないが、そういった甘い考えができない
状況に近づいていると思った方がいい。

 

 今回の新型コロナウイルスへの政府の対応を見ても、評判の悪いマスク
やドタバタの給付金、そのための巨額の予算は国債でしか賄えないが、結局
これまでも続けてきた、実質的な日銀引き受けをするしかないという状況。

 金がなくなれば、国債を発行して日銀が買い支えればいいという考え方は、
いずれ増税か債務帳消し的なことをしない限り、維持できなくなる。一時的な
国債発行を否定するものではないが、政府債務の増大は、非効率な所得移転を
生むため、所得の源泉が尽きれば、そういった手段を取るしかないと思う。

 

 今までは、先送りをして問題の表面化を避けてきたのだが、いずれ今回の
新型コロナウイルスへの対応を契機に、問題が顕在化してくると思う。多くの
人は、自分だけが貧乏くじを引きたくないと思っているだろうが、先送りを
するということは、いずれ誰かが負担せざるを得ないということを覚悟して
おく必要がある。