プロジェクトを成功させるには

 ここのところ、新型コロナウイルスに関連して、思うことを書いて
きたが、少し視点を変えて、現状の対応をプロジェクトとして見た場合
どうなのかということを書いてみよう。

 

1.目的やゴールは明確か

  この点は、当たり前のことと思うかもしれないが、政府のやって
 きている施策を見ていくと、目的もゴールも明確でないままに、自分
 たちがやりたいので、これをやりましたということも目につく。
 (何のためにという説明がないのは珍しくない)

  法律には、目的が書かれたりしているが、その目的の達成のために
 やっているかというと、公文書の改ざんや破棄をみてわかるように、
 なっていない。

 

  コロナウイルスの感染拡大阻止ということを言っていても、実際
 には経済を優先したいので、2週間様子をみるといった、矛盾すること
 を平気で言っているように見える。

  人と人の接触を8割削減すると首相が言っても、幹事長ができっこ
 ないと言うのを聞くと、本当にゴールが明確になっているのかと思う。

 

  プロジェクトでは、目標が異なれば、手段も経路も180度違うという
 ことがよくある。例えば、経済を優先させるのであれば、ある程度の
 人的犠牲は許容するというのと、人的犠牲を最小限にしたうえで、
 経済も何とか維持するというのでは、全くプロセスが違ってくるだろう。 

 

2.プロジェクトの態勢ができているか

  どんなプロジェクトでも、内部の要員だけで全てをカバーするのは
 難しい。そこで、外部の専門家の力を借りてことに当たるのだが、
 その場合、意思決定を誰がするのか、専門家の判断を誰が評価するのか
 ということが、かなり重要である。そうでないと、外部に丸投げに
 なってしまうことが多く、結果的にプロジェクトの失敗を外部の責任
 にして幕引きするといったことも多い。

 

  外部の専門家の言っていることが、全て正しい訳ではないし、
 さりとて、内部に専門家がいても、その人の言っていることが全て
 正しいということでもない。外部の専門家を使いこなすには、内部に
 同等レベルの能力があるか、外部の専門家の言っていることを評価
 できる人間が必要である。

 

  今回の場合、政府の専門家会議の立ち上げが遅れたのは、内部に
 専門家がいるので、それで対応できると踏んだのかもしれないが、
 結果としては、内部の専門家だけでは、十分な能力がなかったと
 言える。

  ただ、問題は、それだけではなく、総理大臣を本部長とする対策
 会議への意見具申的な存在になっていることの方が問題だと思われる。
  それゆえに、全国の学校の一斉休校要請や全世帯へのマスク配布
 といったおよそ、プロジェクトだったら、ありえない施策が飛び出て
 くることになる。

   本来的には、台湾のようにとは言わないが、トップは、全体を
 理解して必要な施策を優先づけて進めることができるのと、そこには、
 その施策を実施するのに十分な能力を持つスタッフを配置することが
 必要である。

  意思決定は、ステアリングコミッティで行うにしても、実際の
 プロジェクトはプロジェクトマネージャーと複数のプロジェクト
 リーダーで動かしていくのが一般的なスタイルである。

 

3.進捗管理ができているか

  プロジェクトが動き出したら、目標に対して、状況を把握して、
 進捗管理を行い、必要があれば、戦力の逐次投入や手段の追加を
 していく必要がある。少なくとも、見ている限りでは、ダイヤモンド
 ・プリンセスの場合でも、そうだったが、どこまでやっていくのか
 と、どこまで進んでいるのかというのは、明確になっていない。
 今でも、入院している人がいるようなので。

   今回の場合も、おそらく、一番感染拡大スピードが速いのが
 東京都で、そこに焦点を当てて管理していくのと、それとは別に、
 感染者数と医療体制との比較で、医療崩壊の危機が高い県に焦点を
 当てて管理していくことが求められるはずだが、そういったことが
 できているのだろうか。

 

4.外部の評価

  プロジェクトの進捗は、内部で管理しているために、独善に陥り
 やすい。また、成功か失敗かで評価されるために、秘密主義に陥り
 やすい。特に、そのプロジェクトが専門的、大規模になると全体を
 把握するのが困難ために、最終段階にならないとわからないといった
 こともある。

  そのためには、外部の専門家による第三者評価が有効である。
 今回のような行政に関連することであれば、適切な情報公開により、
 第三者が評価できるようにすることが必要ではないか。ニューヨーク
 州のクオモ知事が、感染状況について、図表を使い、わかりやすい
 ブリーフィングを毎日実施しているのを見ると、制約を受けている
 市民も安心感を覚えると思うので、見習って欲しい。