戦術はあるけれど戦略はない?

 ある人が、今の新型コロナウイルスの政府への対応を見て、戦術はあるが、戦略はないと言っていた。確かに、クラスター潰しは戦略というより戦術だし、対人接触の8割削減要請といっても、戦術レベルでしかないように見える。

 

 ただ、もともと経済政策を見ても、大きな戦略があって、個別の政策があるわけでなく、デフレからの脱却と言ってみても、金融政策、財政政策に成長戦略を付けて、3本の柱と言ってみただけで、肝心の成長戦略は、消化不良のまま来てしまっている。

 

1.戦略は誰がたてるのか

  会社の経営戦略ならば、経営企画部門と経営を考える役員が検討した上で、経営計画にでも仕立てあげたうえで、個別の戦術は各部門に下していくといったことが多いが、戦略の失敗は、結果として業績に反映し、さらに経営責任になっていくので覚悟もあるだろうが、国家戦略の失敗があっても、外部から責任を問われることはほとんどないので、内部からの批判は、適当にやり過ごしてしまえばいい。

  政治家は、選挙に勝ちさえばいいし、役人は責任を問われることはないので、上を見て仕事をしていればいいので、無理に戦略的なものをたてる必要はなく、地方創生だの、1億総活躍だのというスローガンをぶち上げて、やってる感を出してさえいればいいので、本当の意味での戦略をたてる人間がいない。

 

  今回の新型コロナウイルスの感染拡大が、国家的な危機だというのであれば、これこそ戦略的な対応をしないと、国民全員が不幸になってしまうのではないか。

  形だけの対策本部を作って、形だけの会議を行っても、戦略的な内容がなくては意味がない。現状は、政府がやっていることについて批判はしても、マスコミも、国民も、誰かがやってくれるだろうという期待感と、仕事がなくなり、外出自粛や感染拡大による不安感と焦燥感の中、明確なミッションのある医療現場と担当セクションが、いわば場当たり的に対応しているという感じがしている。

 

  緊急事態だと言って、1か月間行動自粛を求めていても、明確にこうなりますとは言えないのはわかるが、戦略があれば、いくつかの手段を用意して、いつまでにこういう方向にもっていくので、皆さん安心してくださいと言うのが、リーダーの務めだと思うのだが。

 

2.戦略はあれども、実施するには覚悟がいる

  現状、今、発生している感染者数は、2週間程度前の状態を反映しているものだとすると、行動自粛の効果はあっても、感染経路不明の割合が高いのと地方への拡散が続いているので、よくて横ばいになるのではないか。

  そうしているうちに、医療資源が枯渇して、医療崩壊が始まり、最終的には感染爆発へつながっていく可能性もかなり高い。そうなると、海外のように、強制的なロックダウンの方法を模索して、時限立法を作るといったことも想定される。

  

  現状の法制度の、強制力がない中で、感染を抑えるためには、個人個人の良心に期待するようなやり方では難しいと思う。

  中国政府のやり方が正しいとは言わないが、早い段階で、感染地域と非感染地域を区分して、感染地域の封じ込めを行い、感染地域から非感染地域への移動を徹底的に抑えるなり、管理していくのがよかったのではないか。

  感染が拡大してしまい、全体が感染地域になると、面での戦いから個別拠点での戦いになり、いわばゲリラ戦のような状況になっていくため、かなり時間がかかるという覚悟がいる。まして、緊急事態宣言を全国へ拡大しても、具体的な地方への感染拡大阻止策が明示されている訳ではないので、危機感が強い。

 

  現状、感染者の情報公開については、自治体毎にバラつきがあり、また、感染経路不明の中には、個人が本当の事を話さないといったこともあるようだが、個人情報保護法下でも、公共の安全と秩序という観点で、域外から感染を持ち込んだ場合や感染が疑われる場所の多くについては、情報を公開していくことが必要と思われる。
 

  このウイルスは、症状が見えないので、感染した人間に責任はないかもしれないが感染者が立ち寄る場所の管理者には、一定の責任があると考えるべきで、個人ならそれぞれの家人、会社ならばオフィスの勤務者、公共交通機関なら運転者や従事者、病院なら医師、看護師等をそれぞれ護る行動を取るようにしないといけない。

  そのために必要であれば、検査もどんどんやっていくべきであるし、予防的な投薬も検討していいのではないか。