新型コロナウイルスとリスク管理

 新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるために、外出の自粛が要請されて
いるが、スーパーに行くと、結構な人がいて、一応、手の消毒やマスクの
着用、レジでの間隔を取るといったことが励行されてはいるが、それほど
危機感を持っているようには見えない。 

 国会でも、オーバーシュートしていないとか、外出自粛の状況を2週間
見てみようといった雰囲気なので、致し方ないとは思う。 

 実際には、オーバーシュートしてしまったら、どうにもならず、国会で
無意味な議論をしている悠長なことはできないはずで、そうならないように
どうすればいいのかを議論して、対策の実行をしないといけないのだが。

 現在の対策に、それほど効果があるという自信があるとしたら、感覚が
狂っているとしか思えない。

  それは、それとして、なぜ外出自粛が必要かと言えば、医療崩壊を招く
リスクがあるためで、一方で、経済的なリスクがないわけではないが、
感染症対策に目途がつかない限り、経済活動どころではないのだから、
ここは前者を優先せざるを得ない。

 

1.リスクへの対応

 一般的に、リスクへの対応には、4つのパターンがある。

 ・受容
 ・回避
 ・移転
 ・低減

   受容は、リスクをそのまま受け入れるので、コロナウイルス
 あれば、皆が感染して、集団免疫ができるまで、放置すればいい。
 但し、その過程では、多くの死者が出るかもしれない。リスクを
 許容できる体力がある若者は、これを選択するかもしれないが。

   回避は、リスクそのものが発生しないように、発生する事象
 そのものを無くしてしまえばいいので、例えば、ある島国のように
 ウイルスに対する薬などが開発される場合、一切入国制限をする
 といったことになる。回避は、できれば一番いいが、人の出入りを
 制限することになるので、全てロボットがやってくれればいいが、
 そう簡単ではない。

  移転は、リスクにより発生する損害を、第三者に肩代わりして
 もらうようなもので、通常は、保険が例にあげられる。一部には
 所得補償保険のようなものはあるが、大規模な感染症に対する
 保険は、保険会社でも手が出せないので、地震保険のように、
 国家が制度を作っていくしかない。

  低減は、リスク対策として言われる場合に、一般的な概念で、
 手段・方法はたくさんあり、要はリスクを低減することで、損害が
 費用より小さくなればいい。全世帯にマスクを配ることで、どの
 程度感染が抑止できるかは不明だが、飛沫感染の防止が主なので、
 感染している人が多ければ、効果が期待できるかもしれない。

 

2.リスクはゼロにはならない

  上にあげたように、低減はできても、リスクを完全になくすことは
 できないので、我々としては、いくつかの対策を取ったうえで、
 リスクを許容することになる。

  この場合、人々がリスクが高いと思えば、外出行動を抑えるが、
 それほどリスクが高くなく、経済的な損失の方が大きいと考えれば
 外出行動は減らないことになる。

  よく、休業要請に対する補償といった話が出るが、リスクが本当に
 高いと思えば、営業することによる感染リスクや営業停止を意識して
 補償などなくても休業するはずで、現状は人々の認識がそこまでの
 意識になっていないということに他ならない。

  感染経路が不明の感染者が増加しているということは、いつか自分
 も感染するかもしれないのだが、あまり危機意識を煽るとパニックに
 なってしまうので、そこまで言わないのかもしれないが、医療崩壊
 気が付いた時には、間に合わないで、その結果として、本来、医療が
 受けられるべき人が、受けられずに、多くの犠牲が出るというリスク
 がある。

 

3.リスクをどのようにコントロールするか

  今言われているように、人と人の接触を8割減らせれば、感染者の
 増加が抑制できるので、最終的には、感染者をある程度特定でき、
 抑え込めるという考え方はある。

  一方で、仕事の性格上、また、経済的な理由で、休むことができない
 ため、そこまで接触が減らなければ、横ばいか漸増していき、最終的に
 医療崩壊を招く危険性がないとは言えないし、少なくとも、感染抑止
 に、長期間を要することは間違いない。

  他に手段がないのかと言えば、前から言っているように、ゾーニング
 と行動スクリーニングで、抑え込んでいくしかないのではないかと思う。
 ただ、半ば強制的な措置を取らないと難しいが、ロックダウンよりは、
 ましではないかと思う。

 

4.ゾーニング

  もっと早くやれば影響が拡大しなかったと思うが、地域は、感染地域
 と非感染地域に区分する。細分化ができれば、それにこしたことはない
 が、ある程度大まかにやって、効果をみていくことができると思う。  

  地域の中でも、感染者がいる病院とそれ以外では、違いがあるように、
 そのエリアの管理者が、消毒を徹底して、外部からの侵入がないところは
 安全エリアになる。

  この安全エリアをいかに作っていくかが、課題になるが、リスクがゼロ
 ではなくても、ある程度対策をして、リスクを下げることは可能になる。
 また、大規模感染を防ぐには、この安全エリアに一般の病人や老人を囲う
 ことが求められる。

  一般の飲食店でも、3密にならないように、また、消毒を徹底していけ
 ば、安全エリアになるが、そこに、顧客が入ってくることで、感染リスク
 が入ることが、問題になる。そこで、必要なのが、スクリーニングに
 なる。

 

5.スクリーニング

  今、保健所とかでやっているスクリーニングは、追跡スクリーニングで
 感染者と感染者の濃厚接触者を追いかけて、潰していこうとしているが、
 感染者が少数の時は、何とかできても、感染経路不明が多くなってくると
 その有効性が落ちてきてしまう。

  行動スクリーニングは、行動者をパターン分けして、グローバル、
 ナショナル、リージョナル、ローカルといった行動パターンで、それに
 対応したコントロールをしていこうという考え方である。 

  グローバルは、既に、空港の検疫でやっているが、海外の感染地域から
 入ってくる人間は、検査か2週間の自己隔離で、感染者を特定していこう
 というもの。

  ナショナルは、国内でも感染地域から、非感染地域に移動する人間は、
 行動管理を義務づけて、非感染地域に入った場合は、2週間の自己隔離を
 求めていく。具体的には、移動する人間には、スマートフォンのアプリ
 の登録を義務付けて、行動監視をしていくのが望ましい。

  リージョナルは、大都市圏等の限られた範囲を移動する人間で、感染
 地域での移動は、前述のスマートフォンアプリを登録して、感染者が発生
 した場合に追跡をしやすくする。大企業の社員などは、オフィスでの管理
 にも役に立つと思われる。

  ローカルは、非感染地域内では、限られた活動しかしないので、基本
 的に管理不要だが、外部から感染が持ち込まれた場合、直ぐに特定が
 可能になるメリットがある。感染地域でも、外出しない人には行動管理
 は不要だが、任意でスマートフォンアプリを持てば、自身の防御に役に
 立つ。 

  不特定多数の人が利用するエリアでは、行動管理アプリを持っていない
 人の利用を断るのがいいし、飲食店などは、行動管理アプリを持つ特定
 少数の人の利用なら、リスクを店も許容できるのではないか。

  いずれにしても、狙いは感染拡大防止のために、追跡を容易にすること
 なので、感染拡大が収束すれば、アプリの利用は廃止すればいいと思う。
     ただ、これで全てがカバーできるわけではなく、守べきエリアの従事者
 に対しては、検査をするなどして、安全かどうかを常に確認して、
 リスクを下げていく必要がある。