Think ,Think,Think

 会社に入って間もない頃、たまたま貰った卓上カレンダーに、この言葉が
書いてあった。ご存じの方もいるかと思うが、これはIBMの社内スローガン
だったもので、仕事に行き詰った時に、これを見てよく考えてみようと思った
ものだ。

 もともと、学校の暗記中心の受験勉強が嫌で、自分なりに考えて何か結論
を見出すことの方が楽しかったように思う。もっとも、そんなことをして
いたせいか成績の方はいつも低空飛行だった。

 夏休みに、課題ということでもなかったが、論語をずっと読んでいたこと
がある。論語読みの論語知らずという言葉がある位で、それがどれほど役に
立ったのかはわからないが、その中に
「子曰く、学びて思わざれば則ち罔し(くらし)、思いて学ばざれば則ち
殆し(あやうし)。」というのがあり、昔の人も考えることは大事だし、
ただ思想だけあっても知識を得ることがなければ、偏ってしまうなと思った。

 そんなことも意識の底にあったのか、会社に入ってこの言葉に出会った時は、
金言だと感じた。
 

 何か課題があった時に、解決法を探るのには情報を集めて分析し、考えて
みることが必要だ。それをしないで、他人の意見に乗っかっているだけだと、
思わぬところで足をすくわれるということもある。
 人の意見は参考にはなるが、当事者でなければわからないこともあり、
一般論だけで物事を考える訳にはいかないこともある。
 そういう意味では、考えることは人の意見を鵜呑みにするのではなく、
全体の状況を掴んで解釈するということにつながる。
 そして、最後に結論を出すのは自分なので、それなりに責任もある。


 今は忙しい時代で、直ぐに結論を求める人がいるが、考えもしないで結論
を出すことは、他人の意見を受け売りしたり、外部に丸投げするということ
にもつながる。
 一般に、人はいいことしか言わず、自分に都合の悪いことは隠して、後で
聞かれなかったから答えなかっただけだということを言ったりする。また、
やりたくない理由は山ほど考えるが、どうしたらできるのかという説明を
聞くことは稀である。
 そういう意味では、自分で考えてみて、メリットだけでなくデメリットが
あるのではないのか、デメリットはどのように解決していくのかというのに
納得して、始めて理解が進むと思う。


 例えば、ふるさと納税は、一部の地方にはメリットがあるのかもしてない
が、税金全体が増える訳ではないし、都会の税金が流出する自治体には
大きな不満がある。
 また、納税額が多い人ほど、返礼品で受けるメリットが大きいという
不公平な面がある。まあ、返礼品で地域の産品が売れるということはあるの
かもしれないが、結局、本来の税金の一部がそれに使われているだけなので、
税金全体としては目減りしていると言える。

 電話料金の値下げを政府が言うのもおかしな話で、民間で決めている価格
に政府が介入するということであれば、公共料金に位置付ければいいのだが、
それをしないで圧力をかけて下げさせるというのを見ると、いつから日本は
全体主義的な国家になってしまったのかと思う。
 ちなみに、私自身はとうの昔にMVNOに変えて、電話料金の負担は大幅に
減っていて、この話はどうでもいいと思っている。

 賃上げについても、政府主導で3%以上の賃上げとか、最低賃金の引上げ
を言い出すとなると、従来の制度の枠組みを壊して、本来当事者でない者が、
自分たちの思い通りにしようとしているとしか思えない。
 確かに、議論をしていると、お互いの言い分があり、平行線なので簡単に
結論が出ない面はあるが、賃金は支払い能力の問題もあって、払えるところ
と払えないところがある。
 政府だって、財政状況を考えれば、賃上げができる状況ではないはずだが、
公務員の数は多いので、賃上げをしないと不都合があるため、閣僚の給与の
一部を返上する程度で取り繕っているだけだ。
 
 本来は、そういうことをしようとするならば、丁寧な説明という言葉でなく
きちんとした論理的説明をして、関係者を説得しなければならない筈だが
そういった努力はされてきていないように思う。
 
 
 政治の世界は、権力や選挙しか考えていない人たちも多いので、そんなこと
を言っても仕方がないが、自分の身を自分で守るためにも、よく考えることが
大切だと思う。