GOTOトラベルの問題点

 
 GOTOトラベルが感染拡大につながっているエビデンス(証拠)はないと
言っていた政府が、一転して一時中止を決めた。
 専門家の集まっている政府の分科会が、強く中止を求めていたのだが、
頑なに拒んでいたのに、そうなったのは感染拡大と世論調査の結果では
ないかと言われている。


 感染拡大につながるエビデンスがないのは確かだが、そもそも調査を
していないし、保健所などもトレースしていないのだから、ないのは当た
り前で、本来的には調査して影響があるのかないのか確認すべきものを
誤魔化しているとしか思えない。

 そもそもGOTOトラベルのような、奨励策は感染が収まってからすること
になっていたにもかかわらず、感染が少し落ち着いてきたところで、見切
り発車的に始めたものと認識している。
 観光関連産業の苦境に、何とかしてやろうという気持ちが分からないでは
ないが、実施するのであれば、感染拡大に影響しないように配慮して実施
するべきだったのだが、事業を発表してから参加者に予防措置を求めると
発表するような状況だったので、キチンと検討したものとは思えない。


 観光庁は、事業推進はするが感染予防については事業の一部と思ってないし、
各県も個別事業者の感染予防レベルを管理する立場にはないのだから、その
実効性が疑われるのも無理はない。

 GOTOトラベルが感染拡大につながるかどうか明確でなくても、基本的に
ウイルスは人から人へ感染するため、人と人の接触が増加する観光が影響
しないというのは、限られた条件でしか成り立たない。
 その条件は、旅行者に感染者がいないか旅行者の立ち寄る先に感染者が
いない位しかないと思う。


 逆に言うと、そういった条件が満たせるのであれば、キャンペーンなど
しなくても、自由に旅行してくださいと言えば、多くの人が旅行すると思う。
 政府が本来しなければならないのは、そういった環境を作ることなのだが、
それには手間がかかるので、安易な補助金事業に走っているだけだ。

 また、GOTOトラベルは、巨額の税金を使った事業にもかかわらず、医療
従事者や基礎疾患を持つ人、経済的な余裕がない人は参加できないため、
不公平だという意見もある。
 従って、本来するべきは、誰もが安心して旅行できる環境を構築すること
なのだが、そこをどのようにして実施していくのかが見えないところに問題
がある。
 

 GOTOトラベルを一時中止しても、本来的にするべきことをしない限り、
感染拡大が急速に止まることはないと思われるので、本気に抑え込もうと
考えるならば、大きく社会活動を抑制するしかないが、それをすると経済的
なダメージが大きくなるので、やりたくないというのが本音だろう。

 ただ、何を優先するかで、医療崩壊して死者が増加しても経済が良ければ
いいと考えるか、ロックダウンして経済が落ち込んだとしても感染が抑え
込めればいいと考えるかでは、取るべき手段も異なってくる。
 現状は、そこもどっちつかずというか、明確な指針を持っているように
見えないため、GOTOトラベルを中止すべきかどうかの判断も恣意的になって
しまっているように見える。


 もしGOTOトラベルを中止せずに実施するのであれば、次のようなことをする
といいのではないか。

1.参加者は感染者でないことを証明できるようにする。
   … PCR等の検査を義務付けるか、10日間程度の隔離施設を経て参加
     非感染地域に居住等

2.参加者は行動記録を取り、感染した場合は報告と行動記録の提供を義務付ける
   … 旅行終了後、14日経過したら記録は自動的に破棄される

3.目的地の事業者は、感染者がいないことを証明できるようにする。
   … 従業員に検査を義務付けるか、隔離施設から通勤、非感染地域に
     居住させる等

4.目的地の事業者は、旅行者の利用記録を取り保存し、感染者が発生した
  場合は、報告と利用記録の提供を義務づける


 こういったことをするためには、約款の整備、検査態勢の整備、システムの
整備等が必要になるが、これ位のことをしなければ、感染拡大は抑止できない
と思った方がいいのではないか。
 検査をしても、漏れは出てくるので、感染ゼロにはできないが、重要なのは
感染経路が不明となる者をこの事業から出さないということなのである。