可もなく不可もなし

今週のお題ふるさと納税

 

 ふるさと納税は、税金が自治体から自治体に移転するだけで、
税収全体が増加するということではない。
 そういう意味では、税収を奪われる側には不満が募り、税収
を増やそうとする側は、魅力的な返礼品を用意して、多く集め
ようとするのだが、制度設計がいい加減だったため、ギフトカ
ードのようなものを返礼品にする自治体が出て混乱を招いた。

 制度設計がいい加減なものを作って混乱を招いたが、責任を
取るどころか、この制度を業績としてあげているのを見ると、
言ったもの勝ちなのかとも思ってしまう。

 
 返礼品については、政府が縛りをかけて、ギフトカードのよ
うなものは無くなったが、制度自体の問題は残ったままだと思う。

 税については、公平感と納得感が大事だが、この制度は高額
納税者が、わずかな手数料で別の自治体へ税移転することで、
納税額の何割かに見合う返礼品を得るようになっているため
実質的な税負担の軽減が得られており、公平感に欠けると思う。

 誰もが利用できることにはなっているが、確定申告をしない
多くの人には敷居が高いが、高額納税者は確定申告をするため、
メリットに比べて事務的な負担も小さいと思われる。
 加えて、税金が流出する自治体からすれば、想定外の金額の
歳入減が発生するため、予算編成に支障があり、納得感のない
ものになっていると思う。
 
 
 と言っていい点がないわけでもない。一つは、ふるさと納税
を利用する自治体が増えたことで、全国的には無名な自治体が
特産品を紹介することにより、税収だけでなく、知名度も上が
ることだ。
 利用者からみても、こんな自治体があり、特産品があるとい
うことを知ることができ、広告宣伝効果は、費用対効果からす
ると大きなものがある。

 二つ目は、特産品の販売を通じて、地元企業の振興に寄与す
ることだが、一方で税収が丸々自治体に入るわけではないので、
基準を超えずに負担割合をどのようにするかで知恵比べになっ
ている。

 三つめは、ふるさと納税を利用するための民間ウェブサイト
が多くあり、自治体の事務負担と利用者側の負担が大幅に軽減
されていることだ。
 政府のデジタル化も、民間の力を使いながらすると効率化さ
れると思うが、そのいい例だと思う。


 この制度を言い出した人がトップにいるので、制度の見直し
や廃止は期待できないと思うが、私は返礼品が高額にならない
よう制限して分散化させ、多くの自治体が恩恵に預かれるよう
にした方がいいと思う。


 制度を批判しているからこの制度を利用していないかと言わ
れそうだが、高額納税者ではないものの、少しは利用している。
 最初は、どんな仕組みなのかを確かめてみたいということで
始めたのだが、今は寄付の変形という感じでやっている。


 できる金額に限度があるということもあるが、地元の自治
の税金が減るのも好ましくないと思うので、地元自治体のサー
ビス提供度合いと自分の納税額を勘案して、利用額を決めてい
て、結果的には年数万円程度になる。
 それでも、地元自治体の減収総額は10億円位あるようなので
いかに利用者が多いことか、税収規模がそれなりにあるとは言
っても、この金額は痛手だと思う。


 私は、出身地に住んでいるので、本来の趣旨から外れるかも
しれないが、ふるさとでなく知人がいる自治体を選択している。

 そこは米作地帯にある市なので、当然のように返礼品は米で
ある。
 手数料を払うと、スーパーで米を買うのと大差がないような
感じもあるが、縁のある地の産品は当地では手に入らないので、
それだけでもありがたい。
 また、同じ頂くなら新米がいいので、新米が出る頃を見計ら
って申し込んでいるため、おいしく食べることもできる。
 最近は銘柄も選べるため、新品種を試食したりして楽しんで
もいる。

 そういう意味では、私にとってこの制度は可もなく不可もなし
ということではないだろうか。