AIについて思う

 

 ChatGPTが出て、AIの利用が広がったことで、様々な議論が沸き起
こっている。
 これまで、電気製品などでAIをうたうものは、AIかどうか疑わしいもの
が多かったが、ChatGPTは対話型で質問に答えてくれるので、あたかも
相手がいるように感じさせてくれるため、AIを実感することができる。
 とは言え、相手が見えないので、本当にAIが答えているのかを確認
する術もないのだが、タダで質問に答えてくれたり、翻訳作業をやってく
れたりするのだから、使わない手はないと思うのも無理はない。


 AIという言葉が出てから、ここまで来るのに結構時間がかかったとも
言えるし、もうここまで出来るようになったのかという人もいるだろう。
 機械で、人間のように推論するということができないかという課題は、
私が学生の頃からあったのだが、そのための学習メカニズムや推論方法
とバックにあるデータの整備などに課題があり、さらにデータ量が多くなれ
ばなるほど、膨大な計算量が出てくるので、昔のハードの処理能力では
簡単なロジックしか作れなかった。
 それが、家電のAI的なものと言ってもおかしくないだろう。


 ChatGPTは、自然言語のスタイルで質問と回答が行われるため、あた
かも人工知能を持つマシンが答えてくれるように見えるのがミソだが、一方
で回答のベースになる知識をどこから持ってきているのかが不透明だ。
 一説では、インターネット上に溢れるデータを貯め込んで、編集解析して
いるとも言われているが、基になるデータの信頼性がどの程度高いのか、
サービス提供会社は説明していない。
 AIは、ベースになるデータと推論、深層学習などのロジックが核になる
と思うのだが、そのどちらもオープンになっていないので、妥当性の検証が
できていない。

 現在の利用者は、ネット上の検索結果と同様に、回答については間
違っていることもあるという前提で使うしかないのだ。


 行政や会社で、積極的に利用しようという動きがあるが、機能を限定
して使うのであれば、生産性を高めることができると思う。
 一方で、入力データについてのセキュリティを利用者の節度に求めるよう
では、セキュリティレベルの維持はできないと思う。
 従って、一部の企業のように、社内に蓄積されたデータを使い、社内に
限定したデータベースとアプリでセキュリティを確保しながら使うというやり方
はいいと思う。

 一般の個人が、従来の検索の延長上で使うのであれば、それほど問題
ないかもしれないが、学生や個人がレポートなどの著作物を作るような場合
は、データソースが明確でないのと、オリジナリティが無くなる懸念があるので、
注意がいると思う。


 個人的には、サービスを提供するのはいいが、その結果による社会的、
倫理的な問題を考慮せずに、サービスを先行してしまったのはいかがなもの
かと思う。
 企業は、利益を追求するためにサービスをいち早く提供して、市場占有
するという行動に出るのだが、法的・制度的な面での整備は、企業の対象
範囲外なので、抜け駆けすることが往々にしてある。
 その結果として社会的な混乱が生じることは避けがたいと思う。

 新しいサービスを擁護する人は、多少の問題があっても、実際に使ってみ
ないとわからないし、問題が出れば後から修正すればいい位に考えているの
だが、実際のところは後から修正するのが難しいということも多い。


 ネット上のSNSサービスも、利用者が爆発的に広がってしまった後で、規制
をすると言っても、誰がそれに従うのか、サービス提供者がビジネスモデルを壊
してまで従うのかといった問題に直面している。
 AIの利用についても、プラスマイナス両面があり、サービスの中味がブラック
ボックスで、サービス提供者の自主規制に依存するのは危険だと思う。

 SNSサービスのフェークニュースですら、まともに対応できないのだから、AIに
よる加工が入ったフェークニユースは、もっと難しくなるのではないだろうか。
 そういう意味で、利用に当たっては、個人の倫理観に依存するのでなく、
システム的なガードを厳しくかけて、法規制するようにするべきだと思う。

 現代は、性善説で規制できるような時代でなくなっているという認識なの
で、きちんとした基準を作り、規制を行わないと、混乱が拡大していくと思う。
 AIはビジネスチャンスでもあり、ビジネスクライシスでもあると思った方がいい
ので、浮かれることなく全体を見極めて行動してもらいたい。