日本の防衛論議に欠けているもの

 

 防衛問題については、基地先制攻撃やら防衛費の増額の
財源やらといろいろな議論があるようだが、私が前から疑問に
思っているのは、本当に皆がわかって議論しているのだろうかとい
うことだ。
 一部の防衛族の人間を中心とした議論に、全体が巻き込ま
れ、ウクライナ情勢や北朝鮮のミサイル発射で、世論も敏感にな
っていることもあって、それに乗った報道が多いような気がする。

 日本の防衛を考える上での出発点は、「何を何から守るのか」
という点ではないかと思う。
 よく、「国民の命とくらしを守る」といったことを言われるが、これ
はスローガンであって、具体性がない。
 陸上イージスの設置が問題になった時も思ったが、日本全体
で2基地を作るだけで、何を守ろうとしているのだろうかと。

 ミサイル攻撃があるかもしれないという想定自体はいいとしても、
どこが攻撃された場合に、どのようにして守るのか。
 敵基地攻撃能力といっても、どの時点で判断し、実際にどこを
どのように攻撃すれば有効なのかということがハッキリ示されている
とは言えない。
 防衛もセキュリティの一分野と考えれば、セキュリティ対策に
完璧というものはないし、費用対効果を考えないと無制限に費用
をかけることはできないと思う。
 そういった前提なしで、財源の議論をしているのは滑稽としか言
いようがないのではないか。

 よく言われるGDP比で2%といったことも、特に根拠があるわけで
はなく、政治的な思惑でしかない。
 具体的な防衛の内容がなく、全体の数字だけが先行するとい
うことで、本当に防衛力が強化できるのだろうか。
 自衛隊に限らず、人手不足や兵站が不足するような状況が
国全体で見られるような状況で、本質的な議論が置き去りにされ
ているのは、憲法改正とかLGBTQへの対応でも見られると思う。

 ミサイルは飛んで来ていないが、実際にはサイバー攻撃や情報
戦が既に行われてきているのだが、そういったものへの対応も遅れて
いるし、間接的にはエネルギーや資源の戦略も防衛に資する。
 経済安全保障も数年前から言われてきているが、そういったもの
も含めてトータルでの防衛議論がされていない。
 失われた30年を見て思うが、トータルかつ長期的な視野で国力
を高めるという姿勢が、わが国は不足しているのではないだろうか。

 防衛論議をするには、本質的なことを含めた総括を行い、専門
家だけでなく、ふつうの国民にもわかるレベルで議論ができる基盤
作りをするべきだろう。