民主主義社会で大事なこと

 新型コロナウイルスでは、世界の各国で行動制限や
行動監視が行われて、民主主義社会への危機感が高く
なってきている。

 我が国でも、自粛要請で行動が制約されたり、営業
ができなくなったりしており、緊急事態宣言後も、
新しい生活様式を求められたり、気の緩みへの警告が
あったりして、統制色が強くなっている。

 

 政府や自治体は、住民の健康を守る、経済を守るという
観点であれこれ言ってくるが、民主主義社会を維持して
いくための大きな原則は守っていくべきである。それが
ないと、民主主義社会が、全体主義社会に進んでいって
しまう。

 

 民主主義社会で大事なことは、まず透明性だ。政策を
示す場合や、実行する場合に、十分な情報開示が国民に
行われなければ、独断・独裁を招いてしまう。これまでの
新型コロナウイルスへの対応を見ても、休校要請やマスク
の配布などは、どのような過程で、どのような根拠で決定
されたのかなどがはっきりしない。

 決定や実行過程が不明なものは、不信感を招くだけでなく
決定そのものへの実効性が損なわれることになる。

 

 次に大事なことは、ルールに基づいた正当性だ。よく、
公正を訴える人がいるが、公正は普遍的なものではない。
時の権力者が、これは公正だと言えば、公正という扱いに
なってしまう。政府が後付けで法律の解釈を変更しても、
公正だと言い張れば、それが通ってしまう。

 ルールに基づいた正当性は、公正とは違う。皆が認めた
ルールに従って行われたことであれば、認めようという
もので、そのためには、曖昧な運用ではなく、明確な基準
の制定が必要になる。いくら恣意的な運用はしませんと
言っても、それが担保されないものは、全く意味がない。

 相手の言っていることをフェークだと言う人間は、それが
フェークである証拠を示すべきであり、相手を誹謗中傷する
行為は、匿名で行われるべきではないといったルールを
決めていくことが必要だ。

 

 最後は、総合的な議論や検討だ。全ての政策・施策には
メリットもあればデメリットもある。往々にして、人は
自分に都合のいいことは取り上げるが、都合の悪いことは
隠蔽するなり、意識的に避ける。そのために、世論を誘導
することは普通に行われているが、全ての材料を出した上で
自分はこのように考えるということを主張しないと、健全な
民主主義は育たない。
 日本の教育で欠けているのは、反対意見がある場合、反対
意見を言う人が、どういう根拠でそういうことを言っている
のかを示すこともなく、それぞれが考えることをやらせない
ことにある。

 ディベートは技術的な訓練もあるので、そこまでさせるか
どうかはあるが、自ら考え、行動するということをしないと
民主主義は維持できないと思う。

 

 新しい生活様式に合わせて、改めて民主主義社会を守って
いくことを皆で考えて欲しいものだ。