感染拡大に思う

 

 今までCOVID-19については、随分書いてきたので、もういいかと
思っていたのだが、感染拡大が急速に進んできているので、一言書
いておきたい。


 まず、7月初に東京に出された緊急事態宣言は一体何だったのか。
感染拡大への予防的な意味あいで早めに対応したという説明だった
と思うが、結果としては意味が無かったということになる。

 過去の緊急事態宣言では、感染者の増加が伝えられて、皆が行動
を控え始めた後に緊急事態宣言が出ていたので、結果的に緊急事態
宣言後にピークを迎えそこからスピードに差はあれ下降していった。

 今回の緊急事態宣言は、感染者数が底を打って、上昇傾向にある中
で出したのだが、1都3県ではなく東京だけという何とも中途半端に
感じたものだ。多分にオリンピックを意識したのだろう。
 東京は周辺3県との人の往来が多いので、東京だけというと効果
が弱くなる。まん延防止措置は出しているというかもしれないが、
どちらにしても効果には限界がある中で、緊急事態宣言は出しても
人々の関心はオリンピックにいってしまっていたのだから、効果が
あがるはずがない。

 もし、東京に緊急事態宣言を出すのであれば、もっと強力で、実効
性のある対策を合わせて出すべきだった。


 オリンピックとの因果関係を言われても、明確な証拠はないので、
言ったもの勝ちかもしれない。オリンピックのテレビ視聴率が高い
ので、ステイホームに役立っているかのように言っていたが、皆が
オリンピックを見ている訳ではないし、関心のあるのは日本選手の
活躍だけだろう。
 テレビでもメダルを取った選手を持ち上げ、昂揚感を演出している
が、緊急事態宣言下でも昂揚感を持って外出する人が増えるのは当然
と言えるのではないか。
 さらに、高齢者へのワクチン接種を急がせたおかげで、高齢者の
感染は減っているが、若者は夏休みにオリンピックがあれば、外出を
するなというのは無理な話だろう。
 高齢者の一部は、ワクチン接種で安心して外出する人もいるし、
飲食店は長期の緊急事態宣言で、経営的なダメージを受けて、指導に
従わない店も増えている。

 感染拡大への条件が揃っているにもかかわらず、緊急事態宣言を発
出してから、何をやっていたのかと言いたくなる。


 政府には、戦略も戦術もないので、ワクチン頼みの一辺倒に見える
が、そのワクチンも何時までに、誰に打つのか、その効果がどのよう
になることを描いているのかも見えない。
 おそらく、7月までに高齢者へのワクチンを打ち終えれば、重症者
や死者が減るので、それで十分という判断をしていたようにも見える。
 だが、最初から国民全体からすれば20~30%程度の接種率では、
感染の拡大を防ぐのは無理なことは解っていたと思う。
 今は、ワクチン接種を急いでやるというようだが、希望する人が
全員接種できるのは早くても9月か10月になるだろう。
 さらに、欧米ではワクチン接種者でもデルタ株への感染が増えてい
るため、政府も対策の見直しを迫られるに違いない。


 IOCは、感染拡大とオリンピックは別次元で、大会はバブルの中に
あり、感染者も抑えられていると言うが、IOCがバブルを維持してい
る訳ではなく、組織委員会や政府などの関係者が、一定のルールで
エリアと関係者を管理しているのだが、強制力が弱いため、どこまで
維持管理されているのか疑問がある。

 こう言っては何だが、IOCは自分達の大会さえうまく終了すればいい
ので、バブルの外で何が起こっていようと関係ないというスタンスに
見える。
 国民感情からすれば、無理してオリンピックを開催したのは、IOC
が何が何でもやると言っていたからではないかという風に思う人も
いるし、政府がオリンピックを開催する意義について、明確な説明も
ないままに開催へ突入したのもあって、勝手にやるなら俺たちも勝手
にやるわという人が増えてもおかしくない。


 時間は十分にあったのに、現在のような状況を招いている責任は、
政府、国会、自治体の全てにある。
 目先の対応に終始するのでなく、これまでの対応を反省して、何を
しなければいけないのか考え、早急に対応するべきだろう。


 感染対策の基本は、ゾーニングとスクリーニング(検査と行動管理)
だと思うので、ここを拡充して、ワクチンを併用しながら安全なゾーン
を拡大していくしか道はないと思う。