何のために

 日本学術会議の推薦議員のうち6人の任命を政府が拒否したことについて
明快な説明がないことから、多くの議論が起こっている。
 学問の自由への侵害とか、法律解釈が間違っているといったことなど様々な
見解があるようだが、いずれにしても今後、国会を含めて様々な場で議論が
されることになると思う。

 

 私自身は、この話を聞いた時に思ったのは、「これをして何になるのだろう
か? 政府は何のためにこんなことをしようとするのか?」だった。
 その後、このことは、既に2018年の時点で、欠員の補充を巡り政府と学術
会議の間でやり取りがあったことが報道されて、以前からの話だったことが
分かった。
 つまり、前内閣からそういう動きがあり、現内閣は前内閣を継承している
ことから、その延長線上にあることが分かった。

 

 それはそれとして、何のためにという説明はなく、日本学術会議には国費
が入っており、会員は特別職の国家公務員といった説明で、政府に任命権が
あるから、任命しなくていいといった説明で、今回の任命を行わなかった
理由はハッキリしない。

 人事は、個別事項なので説明しないと言い張る可能性もあるが、これは
政府内の人事でなく、推薦者に対する人事なので、その理由は明確に説明
が必要なことは言うまでもない。
 公にするかどうかはあるが、推薦機関である学術会議に対しても、明確な
説明なしに一方的に拒否するのは、世間の常識からも外れている。


 前政権の時も、事実の隠蔽や一方的な回答拒否、後付けでの理屈付けなど
あったが、これも同じで、政権が代わってIT化だとか、行政改革だとか
新鮮なイメージがあったが、相変わらずだなという感じしかない。


 マスメディアは、事件の報道が多いので、5W1Hということを念頭に
伝えてはいるのだろうが、レベルはまちまちで、いつ、どこで、誰が、どうした
という事実のみを伝えることが多い。
 第一報としては間違いではないが、アクシデントと違って政治的な問題は
なぜ(どんな目的で)、どのようにが重要なことが多い。


 政府の発表を含めて、自分たちに都合の悪いことは隠して、今回のように
公になった時点で、いい加減な説明をするなり、ご批判は当たらないといった
問答無用の回答をするといったこともある。
 某国の大統領のように、フェイクだというが、どの部分がフェイクで何が
真実かということをコメントしない人もいるが、そういったことを明確に
することが、マスメディアには求められる。

 

 本当のことは話さなくても、何のためにということは常に追求していく必要
がある。目的が違えば手段が違い、場合によっては結論も異なってくる。
 学術会議の改善が必要とするならば、堂々と自分たちの改革案なり、改善点
を先方に投げて議論するなりしていくことが、本来あるべき姿だと思う。
 今後の展開を見守っていきたい。

 

 なお、この問題に対する新聞各紙のスタンスを見ていると面白い、朝日新聞
は大きく取り上げているのに対し、日経は社説で説明を求めるに留めて、
その後の報道は控えている。他の各社はその中間で、内閣記者会の会見の中で
伝えたり、野党の動きを伝えたりしてはいるが、何のためにということを
政府から聞いたという報道はない。