学術会議の会員任命拒否に関する疑問

 前回この件に関して触れてから一月ほど経って、国会での質疑応答が
行われているが、あまり進展していないようだ。こんなつまらない事で
国会の時間を空費しているのは情けないが、これは野党が悪い訳ではなく
政府が理由を明確にしないためである。

 

 前回は何のためにこういう事をしたのかという観点で触れたが、その
点の疑問は解消された訳ではなく、学術会議の会員推薦制度にに問題が
あるので、そこを是正したいという意図があるように見受けられるが、
任命拒否がそのための正しいやり方だとは思えない。

 総理大臣に任命を拒否することが可能だという見解だが、推薦を受けて
任命するということは、推薦者と任命者の関係は対等で、仮に任命者が
推薦を拒否する場合は、明確な理由を示すべきであろう。
 さらに、一般的には、いきなり任命拒否をして理由も述べないという
のは、相手に対して喧嘩を売って、つべこべ言わずに俺に従えといって
いるに等しく、話し合いで改革をしていこうという姿勢がないといえる。

 政府に味方する人は、学術会議に問題があるというようなことを強調
するが、問題があれば話し合いで解決する、建設的な議論をするという
のが本来あるべき姿で、今のようなやり方は、民主主義に反すると思う。

 

 憲法15条は、公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の
権利であるとしているが、これからすると総理大臣がこれを行使するので
あれば、国民に対し理由を説明するのが、国民に対する当然の義務でない
だろうか。

 公務員の人事については、回答を控えるということで済ませているが、
何の根拠があって回答しないでよいというのだろうか。
 人事が、個人の人権に触れるようなことでもあれば別だが、通常の人事
であれば理由を示さなくていいということはなるまい。過去に、大臣の
指示に従わないということで公務員を更迭したというようなことを述べて
いるのだから、今回の場合だけ述べないというのもおかしい。

 また、「理由が言えることと言えないことがある」という発言は、言い
訳にもなっていないと感じる。理由が言えないようなことをするから、
今回のようなことになっているのではないだろうか。

 

 森友問題にしても、桜を見る会にしても、政府なり当事者が、疑惑に
正面から答えないために、国会の貴重な時間を空費しているようにしか
見えない。
 国会議員の給料も、国会職員の給与や国会に関する経費も、全て税金で
賄われているので、これらに関する損失は一体いくらになるのだろうか。
 行政改革も必要だが、こういったコストに関する意識がある政治家が
一体どれだけいるのだろうか。


 本来取るべきプロセスを無視して、閣議決定で済まそうとした検事長
定年延長問題を見ても思ったが、無理が通れば道理が引っ込むような形で
政治を進めるやり方は、どう見てもおかしい。
 また、それにもかかわらず、それを正当化したり、応援する者がいる
ので、あたかもそれが当たり前になってしまうというのは、見ていて我慢
ならない。ならぬことはならぬのだ。