原発処理水の海洋放出に思う

 報道では、政府は年内にも原発処理水の海洋放出を決めるということの
ようだ。原発処理水の問題は、当初から問題になっていて、地下水の流入
を止めるために、凍土壁を作るといった対策も効果がなく、このままでは
陸上のタンク保管スペースが無くなってしまうため、一定の濃度以下に
薄めて海へ放出することのようだ。

 当然ながら福島の漁業者は、風評被害もあることから反対なのだが、
地元の反対があっても、押し切る方針は、沖縄の辺野古への基地移転と
同じような構図に見える。

 
 オリンピックの誘致の時に、前総理大臣が福島の原発汚染については、
完全にコントロールされていると言い切ったのには驚いたが、今の状況は
コントロールできないために、海洋放出をしたいということだろう。
 凍土壁を作るのにも、300億円以上の費用が投入されているが、効果が
期待できなかったということについて、どう考えているのか聞いた覚えが
ない。
 学術会議に10億円支出することについて、行政改革的な発想を打ちだして
いるが、こういったものや国民配布のマスクの費用などの遥かに巨額の
費用について無駄になっているのを、どう考えているのだろうか。


 このままだと、原発の処理に支障が出るというが、結局のところ海洋放出
の方がコストが安くつくので、やりたいということではないだろうか。
 実際問題としては、処理水の問題が落着したとしても、放射能レベルが
高い部分の解体処理は、目途がついてない状況で、どう見ても完全に制御
できているような状況ではないし、これとも関係してくるが、最終処分場
や汚染土の最終処分も目途がついていない。


 政府の対応も、環境庁経済産業省の両方で対応しているように見える
が、実際のところはあまり進んでいないので、汚染水だけでも片付けたい
というところだろう。原子力発電には、巨額の国費が投入されているが、
廃炉を含めた技術的な問題について、研究する機関は限られているうえに、
事故が起こるまでは真剣に取り組んでこなかったと言える。

 最終処分場は、金で文献調査に応募する町村を釣っているようなやり方
だが、そもそも最終処分場を造るとすれば、単なる地質的な問題だけでなく、
どのような設備が必要なのか、全体的な構想を提示した上で決めさせる
必要がある筈だが、それをするとかなり立地が限定されるため、わざわざ
何段階もの調査ステージを設けて、やってる感を出そうとしているのでは
ないだろうか。

 
 海洋放出するならするでもいいとは思うが、風評被害への対応も含めた
十分な対策と国民全体の理解を得られるようにすべきだと思う。