新型コロナウイルスに関する現状の課題と対策

 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらないが、政府としては経済の回復に
重点を置いていることもあり、今一つ対策が定まっていないように見える。
 ここでは、経済の回復と感染拡大の抑止を課題と置いて、今後どのように
対処すべきかということを考えてみた。

 考え方の整理として、ケースを3つに分けてみる。①感染者がいない場合、
②感染者がいる場合、③感染者がいるかいないかわからない場合とする。

 ①感染者がいない場合は、経済をどのように回復させるか、②感染者が
いる場合は、感染者をいかに隔離するか、③感染者がいるかいないかわから
ない場合は感染者をいかに識別するかが主な対策として考えられる。
 但し現状は、それほど単純に区分できる状況ではないため、各県の状況に
よって、次のような対策が考えられる。

a.感染経路不明の感染者が発生していない県は、経済の回復に重点を置きながら
  感染者の大規模な発生を回避することに重点を置く。
  つまり、散発的に感染が発生しても、大きな影響がおきないようにする。
  また、必要であれば、感染地域からの人の移動について管理をする。

b.感染経路不明の感染者が、継続的に発生している。つまり市中感染が拡大して
 いる県は、感染経路の特定をするために、トレーサーを強化する。
  そのためには、特定の場所に出入りする人間の行動管理や検査を強化する。
  また、大規模な感染の発生を回避することも並行して行う。

c.大規模に感染が拡大している状況では、セグメントを強化して、小さな単位に
  区分して、トレーサーを割り当て、検査を大規模に行い、特定区域での管理
  態勢を確立する。
  一部の区域での管理が確立したら、それを順次拡大していく。


 現状は管理するというより、人々の自粛活動に期待しているようだが、過度
に期待するのは間違いだと思われる。なぜなら、80%の人間が要請に従っても、
残りの20%が従わなければ、徐々に拡大していき、やがて爆発的な拡大につな
がっていくためだ。20%でも実行再生産数が1以上あれば、結果としてやがて
大きな数字になる。今の数字は、その結果と見た方がいいと思う。


 そういう意味では、GOTOトラベルのような振興策は、対策を取っても100%抑止
にはならないので、活動が増えることにより、感染の拡大に寄与する可能性が高い。
 また、振興策を利用しない人間も増えることにより、全体としての感染拡大に
つながる可能性があると思う。

 そのため、振興策を中止するとかしないとかというより、実際の人の動きと感染
経路を把握して、感染した場所での対策が十分かどうかを検証する仕組みができて
いる必要がある。
 現状は、一律にガイドラインを決めて、それに従うようにアナウンスしているだけ
で、それを管理する仕組みがないと思われる。つまり、ガイドラインを遵守していよ
うがいまいが、利用があるわけで、結果としては感染防止策が有効に発揮されない
状態になるので、感染拡大を抑止することができないと思われる。


 どうしてこのような状態になるかと言えば、政府は振興策に重点を置いているが、
感染防止策はガイドラインだけで、実際の管理は自治体まかせのため、ある意味
しり抜けな態勢になっているからだと思う。

 ガイドラインに従って皆が行動するのであれば、感染が一気に拡大することはない
かもしれないが、会食する時にマスクをしたままでいろといっても無理なように、
できることとできないこと、することとしないことの区別を十分に考えた対策でない
と意味がない。
 面倒なことや、強制力を伴うようなことはしたくないという考えが、どうも根底に
あるようで、何をしなければならないか、どうすればできるかという発想が欠けて
いるために、そういったことが起きるのではないだろうか。


 しきりに行われている営業時間の短縮は、一見すると妥当な対策だが、実際のところ
は時間を短縮するより、店の中で密にならないよう密度を下げるとか、顧客が長時間
居座るようにしない方が効果があるのではないかと思われる。

 現状拡大している状況では、何をやっても直ちに効果が出るものではないが、何を
すれば効果があるという合理的な選択をしていかないと、さらに拡大する可能性がある。

 そういう意味では、経済を止めずに感染拡大を抑止したいというのであれば、検査を
併用して人々の行動管理を行い、感染地域と非感染地域を区分していくようなやり方を
工夫するしかないのではと思っている。