円安に思う

 

 最近の急激な円安で、物価の上昇が懸念されて
いるが、日銀総裁が円安は日本経済にプラスと言
ったことから、議論が巻き起こり、結局、通常は
為替レートに言及しない財務大臣が、悪い円安も
あるといったことまで言うようになった。

 為替レートにはいろいろな考え方があるが、短
期でみると実需を含めて金融的な要因が強い、
 金利差はあっても2、3パーセントなら大きく
動く要素にはならないので、日銀が緩和姿勢を見
直したとしても大勢に影響はないだろう。
 ただ、注意しておくべきは、金融緩和や引締め
についての考え方は各国で違い、日本のように短
金利以外の長期金利までコントロールしようと
する国はなく、さらに巨額の財政赤字を背負って
いる国も少ないということだ。

 日銀の政策が硬直化しているのは、日銀が政府
を向いて政策運営をしているにもかかわらず、政
府の成長戦略がお粗末なため、その尻拭いをさせ
られているようにも見える。
 政府も日銀も反省がないので、今のような円安
になるのは仕方ないと言える。


 為替介入は財務大臣の権限で、日銀にはないの
だが、基本的に為替介入は短期的な変動緩和には
有効でも、長期的には無理という認識になってい
る。
 それ故に金利差がクローズアップされてしまう
のだが、実際のところは原油価格の上昇による貿
易赤字のインパクトの方が大きいのではないだろ
うか。

 原油価格の上昇への対応は、緊急経済対策が焦
点になっているが、本質的には我が国のエネルギ
ー政策が迷走していることに原因があるので、並
行して基本的な政策の見直しが必要だと思う。
 

 日銀が言うようにトータルではプラスになると
しても、円安の恩恵を受ける企業や部門は限られ
ているのだから、円安がプラスという言い方には、
文句が出るに決まっている。
 同じようなことは、金融緩和についても言える。
 金利が下がって得する人や企業等はあっても、
損するものもいるのだから、言い方には気を付け
るべきだと思う。
 デフレ脱却のために金融緩和を続けてきている
というが、論理的な根拠がないのは既に明らかで、
国民目線ではない。

 企業が投資をする場合、金利水準が期待利益率
より高ければ別だが、十分に低い水準であれば、
投資判断に大きな影響はない。
 大きく影響するのは、巨額の借入を行っている
企業や政府なのだから、日銀はそこに対して利益
を供与していることについての説明をするべきだ
し、国民目線としてどうあるべきかを問うべきで
はないか。


 為替の動きは、政府や日銀の説明不足と行動が
不十分なので、今後円安が長期化すると思う。
 これまで十分な説明をしてきていないし、政策
立案も不十分なものが、急に変わるとは思えない
からである。