新型コロナウイルスの感染者数増加の見方

 東京都で、新型コロナウイルスの感染者数が100人を超えたことで、
感染拡大への懸念が高まっているようだが、そもそも感染者数が多い
とか少ないとか言っても意味があるのだろうか。


 3月から4月にかけての感染者数拡大に対して、明確な対策があった
のは、行動自粛要請と営業停止要請で、それは強制力があるものでは
なく、接触率を下げて感染するリスクを下げるというものだった。
 結果として、表面的には感染者数が低下はしたものの、決定的な
対策ではないし、検査による潜在的な感染者の発見は、抑制的に行わ
れていたため、実際の感染者がどれだけいるのかは、わからなかった。


 営業の停止等による経済活動への影響が大きいため、政府・自治
とも自粛要請の解除に突き進んできたが、その間、実態の解明は抗体
検査程度で、その結果が出たのが6月下旬であり、結果を踏まえての
具体的な対策も打ち出してきている訳ではない。


 抗体検査の結果からは、表面的な感染者数の数倍が感染している
ことがわかったが、それは取りも直さず、クラスタの追跡による感染者
の隔離では不十分で、潜在的な感染者が多く存在し、自粛解除に伴い
感染者が増加するということを意味していると思う。

 その結果として、感染者が増加していくことは、ある意味当然で、
感染者数が増加したからと言って大騒ぎするのはおかしいと思う。
必要なことは経済活動を大きく低下させないで、感染者を医療崩壊
招かない程度に抑制していくか、クラスタによる大量感染や疾患を持つ
人への対策で死者を抑制していくかで、そういったことに対する対策や
見解を示すことが行政に求められている。

 

 政府は専門家会議を解散して、新たな組織を作ったが、本来、必要な
ことは専門家の意見を踏まえて、根拠と見通しを示した判断を行政なり
政治家がすべきだったのを、専門家会議に丸投げしたのがいけなかった。
必要なことは、能力のある人が責任をもって判断し、行動することで、
形式的な感染症対策本部のようなものがあっても、今までのように
意思決定の過程が不明瞭なままに施策が実施されれば、うまくいくとは
思えない。

 成功すれば自分の手柄、失敗すれば他人の責任ということがないように
していくべきだと思う。日本の場合、欧米に比べれば感染者数も少なく
また、強制的な措置も取れない中で、今後の対策の柱は、検査数の拡大と
検査対象の明確化だと思う。

 

 政府は1日2万件という数字を出していたが、その根拠を明示しておらず
つかみの数字としか思えない。どこの誰に対して検査するために、これだけ
の数字が必要といった説明なしに、件数だけ一人歩きしているような感が
否めない。提言に見られる1日10万件といった数字も同様で、例えば、空港
検疫で、全員検査をしようと思えば、1日10万件でも足りなくなるのは、
目に見えている。

 検査数を大幅に増加させようと思うと、設備や人員、試薬、輸送体制など
多岐の課題があることはわかっているが、課題はいつまでにどうやってクリア
するかを明示してこそ意味があり、ただできませんと言い訳をしても意味は
ない。

 感染者数が増加すれば、院内感染のリスクが高まることは目に見えており
医療従事者や救急患者に対する感染リスク防止のために、検査態勢を構築
することは急務だし、同様に老人介護施設や介護担当者への検査態勢も拡充
していく必要があると思うが、具体的な施策が発表されているようには
見えない。

 4月時点に比べて検査能力が拡大し、検査数を増やしていることが、感染者
数の拡大につながっている面もあり、そういった取り組みは評価できるが、
それだけでは十分とは言えないだろう。

 抗体検査や抗原検査も併用するとともに、ゾーニングを徹底して、ゾーン
管理者の企業等が、必要と思われる検査ができるような態勢を構築していく
ことが望まれる。