神のみぞ知る

 新型コロナウイルスの感染拡大に対して、担当大臣が「神のみぞ知る」と
発言したことが問題になったが、この発言は政府の分科会の会長が言った
ものをそのまま使ったということのようだ。

 「神のみぞ知る」ということは、言い換えれば予測不能、制御不能な状態
にあるということを認めたようなもので、現状の対応策下ではこう言っても
間違いないということなのかもしれないが、政府の責任者としては、それに
どう対応していくのかという見解を述べる必要があると思うのだが、どうも
それは後回しで、危機感だけを表明しただけなので、批判を浴びたのだと思う。


 一般人としては、感染者の数字が増えていることで、感染が拡大している
ことは解っているのだが、問題はこの数字が増えた場合に、どのような影響
があるかがよく見えていない。
 例えば、医療現場は危機感があるのだが、客観的に見てどのような状況で
今後どのレベルになると社会生活にどのような影響があるのかが明示されて
いない。
 一方で、打撃を受けている旅行業者や飲食店を支えるために、政府が補助
事業をしようとしていることも解っているが、人の移動や会食の拡大が感染
拡大に影響しないとは、誰も思っていないと思う。
 政府は影響がないという自信があるのなら、このまま続ければいいのだが
きちんとした調査をしていないため、数字の裏付けがないので、そこまでの
自信は持てないのではないか。もし、やるならきちんとした調査をするべき
だと思う。


 もともと感染がまだ収束してない中で、キャンペーンをやるのであれば、
その影響を把握できるような仕組みをビルトインすべきだったのだが、現状
の仕組みの中では、それをやるだけの態勢がなかったということだと思う。
 全体的に言えることだが、経済を重視するのは結構だが、感染拡大を抑止
する必要もあるため、それぞれを統括する人間がいて、両者の見解を総合
して、それを判断する仕組みが必用だと思うのだが、現状は担当大臣が見て
いるような見ていないような感じになっている。


 政府の感染症対策本部は、本部長が総理大臣、副本部長が官房長官、厚生
労働大臣、担当大臣という一見豪華な顔ぶれだが、全く機能していないと
言っても過言でないと思う。
 本部長が責任者なら、もっと国民の前に出て具体的に見解を示し、質問に
答えるべきだろうが、そういうこともない。官房長官は、担当大臣がいる
ので、全体を仕切るということはなく、厚生労働大臣は医療現場を直接抱え
ていないため、実態の把握が十分できていないように見える。担当大臣は、
元々経済再生が主任務なので、経済に軸足を置いて考えはするが、医療現場
の関係は、分科会に頼っているようにしか見えない。


 以前から現状の態勢に問題があるということを思っていたが、特に改める
ということもないので、このまま進んでいけば、本当に「神のみぞ知る」
という結果になってしまうのではないだろうか。

 

追記:神のみぞ知るの発言意図はこういうことだそうです。大臣の発言ではありません。

  尾身氏は、感染者数や検査での陽性率などを挙げ、「我々は感染状況を評価するために色々な指標、多角的な方法を使って、今、何が起きているかを知りたいが、100%知ることはデータにも限りがある。そのことを私は比喩的に『神のみぞ知る』と言っている」と説明。「実際は『神のみぞ知る』だが、そこになるべく近づくように色んなデータを総合的に、毎日のように分析することが大事という文脈で申し上げた」と述べた。