東京オリンピックの感染対策責任者は誰なのか?

 

 「安全、安心な大会を開催する」ということを東京都知事
総理大臣も言われるが、誰が統括責任者になって、これを維持
管理するのかが明確になっていないのではないだろうか。

 組織委員会のホームページには、「公益財団法人東京オリン
ピック・パラリンピック競技大会組織委員会東京2020組織委
員会)は、1年延期された東京2020大会を安全・安心に開催する
べく、国、東京都、国際オリンピック委員会IOC)、国際パラ
リンピック委員会(IPC)をはじめとする各ステークホルダー
みなさんと緊密な連携を行い、準備を進めています。その取り
組みをこちらのページにて随時発信していきます。」と記載し
ているが、誰が主体になって感染対策をしているのか明確では
ない。


 2021年4月28日(水)、公益財団法人東京オリンピック・パラ
リンピック競技大会組織委員会東京2020組織委員会)、国、
東京都の3者は、緊密な連携の下、東京2020大会における実効的
なコロナ対策について、総合的に検討・調整するため、「第7回
東京オリンピックパラリンピック競技大会における新型コロナ
ウィルス感染症対策調整会議」を開催しました。
 という記載から、3者の調整会議はあっても、全体を統括して
管理するという組織はないように見える。
 つまり、大会運営にかかる部分、入国管理部分、会場設備など
環境部分で、それぞれ担当範囲があり、それぞれが責任分担をし
てやっていこうというものだが、全体を統括して見ている人間は
いないということだ。


 オリンピックだけでなく、日本国内の感染対策の責任者も明確
になっているとは言えないのだから、無理もない。
 政府の新型コロナウイルス感染症対策本部の本部長は、総理大
臣なので、形式的には決まっているが、自らの言葉で皆が納得い
くまで説明できないような人間に、責任者を名乗る資格はないと
思う。
 そういう意味では、厚生労働大臣や担当大臣も同じようなもの
で、オリンピックに関しても対策を明言していない。


 プレーブックが感染対策の基本的なガイドラインのようだが、
選手を含めて全ての関係者が、これを守ることを誰が管理するか
と言えば、自己責任ということで済ませているように見える。
 実効性を高めるために、組織委員会はCLO(コロナ対策責任者)
の選任を求めているので、見た目はできているようだが、この
コロナ対策責任者という訳語も、印象操作に見える。
 リエゾンオフィサーは、英語の感覚からすると、連絡担当者に
近いもので、彼らに管理責任がないことは明らかだからだ。
 本来であれば、コロナ関係連絡担当者とでもするべきところだ
と思うが、それではまずいと考えた人間がいてもおかしくない。
 何しろ感染も、自己責任であるということで、宣約書を取って
責任回避をしようというスタンスがIOCにあると思えるからだ。


 組織委員会は、選手のワクチン接種に目途がついているせいか
選手の安全・安心には言及しても、それ以外のステークホルダー
にまで安全・安心を言及することは避けているし、国や東京都も
ワクチン接種を受けた人間なら、観客やボランティアとして参加
できるのではないかという考えのようだが、そこまでして開催を
すると言えば、優先度がそこまで高いというコンセンサスはない
ので、批判を浴びることは間違いない。
 選手は、別枠でワクチンが供給されているようだが、実際には
そのためのワクチンが供給されている訳ではないので、既に供給
された中から割り当てをして、後で帳尻を合わせるということで
しかない。ある意味優先接種なのだ。


 オリンピック担当大臣がいるのだから、感染対策を含めた全体
についてとことん説明するべきだと思うのだが、海外からの批判
には、事実誤認があるといった反論をする程度で、安心・安全の
全体像を示すこともなければ、このような状況下でのオリンピッ
ク開催についての問題や課題を示すこともない。
 具体的な課題が示されない状況では、建設的な意見も何もあっ
たものではないと思う。
 緊急事態宣言が出ていても、オリンピックは開催すると言った
IOC委員の発言を補足して、こうすれば問題ないと言うでもない。
 国内での反対や見送り意見に対して、真面に答えない姿勢がこ
こまでこじれている原因だと思う。 
 

 バブル方式だとかワクチン接種とか検査の徹底とか言う前に、
今必要なことはこういうやり方でオリンピックを開催するので、
医療態勢を含めて安心・安全だという説明を国民およびステーク
ホルダーに責任者が徹底的に説明することではないだろうか。