感染拡大への対応

 東京の感染拡大が止まらない。それもそうだろう、いくら
行動自粛や3密回避、手洗い、マスクの励行などを訴えかけ
ても、実行が十分に伴っていないため、実効性がないことを
数字が物語っている。

 強制力のない緊急事態宣言でも、しないよりはましなので
それを出すのもいいだろうが、どこまで経済を止めるつもり
があるかで、結果は変わってくるだろう。


 感染が一部に限定されていた時は、まだ打つ手もあったが
市中感染が拡大してきている現在の状況では、短期間の強力
な行動制限で、感染範囲を抑えていくしかないと医療関係者
は考えているのではなかろうか。

 一方で、政府は経済活動の回復と感染拡大の抑止の二兎を
追っているが、そこに具体的な戦略はないし、現状認識も不
十分であるため、結果的に現在の状況へ至っていると思う。
 この状況を打破するためには、正確な現状認識と効果的な
対策案の策定と実践しかなく、そのための人材確保と法的な
整備も必要と考えられる。


 感染拡大を抑制しながら経済活動を維持するためには、感
染の範囲を限定して、それ以外の場所で経済活動を維持する
のが、基本的な戦略である。
 感染範囲の限定ができない場合は、感染が拡大して経済活
動そのものも維持できなくなるし、医療態勢が崩壊すれば、
それ以上に大きな犠牲を払う必要が出てくるだろう。

 従って、今なすべきは感染の範囲をどこまで限定できるか
正確に認識することである。
 それは、家庭なのか病院なのか職場なのか市町村なのか都
道府県なのか、はたまた国なのか。それによって、対策もレ
ベルも違ってくることを認識すべきである。
 そして必要なことは、単に対策を取るだけでなく、その効
果を検証して、次の対策を立案するプロセスを取ることであ
る。


 現状は、呼びかけによる個人の行動変容を求めているだけ
なので、効果が限られるだけでなく、効果測定するプロセス
が欠けている。
 逆に言うと、効果が明確に測定できないような対策は、主
たる対策にはならない。より具体的に、効果がわかる対策を
取っていくべきである。

   例えば、入国制限をするのなら、徹底して行わないと効果
がないはずだが、現状は効果を明確に測定できるような入国
者のトレースを十分に行う仕組みができていない。

 法的な整備は、営業停止や検査への義務的なことを中心に
動いているようだが、トレース機能や効果測定が十分に行え
る仕組みの整備が欠如している限り、効果的な対策は期待で
きないと思った方がいいだろう。


 ワクチンへの期待は大きいかもしれないが、ワクチンが効
果をもたらす規模まで接種が進むには、時間がかかるし、接
種を拒否する人間もいる、また、ワクチンによっては重症化
を防ぐことはできても、感染を予防することはできない。
 このため、安価で迅速・安全・高精度な検査方法が開発さ
れて各人が感染を直ちに認識できない限り、感染拡大を抑え
るには、囲い込みなり隔離と検査の併用を徹底していくしか
ないのではないだろうか。


 経済との両立を図るには、一度、感染を制御できるレベル
まで減少させる必要があり、ロックダウンはその有効な手段
という認識だが、問題はその後の制御方法や制御手段が確立
していないことだろう。
 欧米の感染拡大は、その典型だが、一方で中国や台湾はあ
る程度成功しているが、初期段階で徹底的な検査と追跡をし
ているということは参考にすべきだろう。

 
 いずれにしても、この状況を打開するためには、情報を集
めて的確な判断ができる組織と人間が必要だが、それはいつ
できるのだろうか。