検査をするのはいいけれど・・・

 

 政府は、検査が足りないという批判を受けて、介護施設や市中などの
検査を拡大するという方針のようだが、検査をすることの意味がよく
わかってないような気がする。

 WHOの事務局長も、テスト、テストと言っていて、検査と隔離を強調
していたが、これは検査をして陽性患者を見つけて隔離することが必要
という意識から出た言葉だと思う。
 しかし、インフルエンザなど一般的な感染症であれば、初期症状が
出てきたところで検査を行い、陽性を確認して隔離するというのでよか
ったが、新型コロナの場合、無症状の感染者が存在するため、これだけ
では、不十分ということがわかってきている。
 だからといって、やみくもに検査をするのは難しい。それができるのは
中国のような強権国家だけだと思う。

 但し、中国は大量に検査をするだけでなく、一定の地域を封鎖して、
地域全体を隔離しながら検査するという方法を取っているので、ある意味
合理的だと思う。
 日本の場合、検査を増やすことは言っても、全体をコントロールする
という意識が見られない。おそらく、感染症の専門家からすれば、個人を
束縛するような強権的な行動は、自分たちの範囲外という考えがあるので
はないだろうか。


 空港での検査は、水際対策として重要なことは誰もが認めるところだが、
単に陽性患者を見つけて隔離するだけでは不十分なことはわかっている。
何故なら、検査の精度は100%ではないからだ。
 従って、厳格に水際対策を取っている国は、入国後2週間程度、ホテル
などに隔離した後でないと自由にさせない。
 日本では、そこまでの措置を取っておらず、お願いベースの自粛要請で
しり抜けになっている。
 入国者について、検査だけでなくその後の管理を厳格にするという意識
がないのが何故なのか、理解に苦しむところがある。
 

 介護施設に対して、定期的に検査をするというのも、何となくいいこと
だと思われるが、検査はその時点の瞬間の状態を示しているだけで、結果
が分かった時点での、状態を保証しているものではない。
 必要なのは、検査をすると共に、その施設の出入りを管理して、検査を
受けた人間を含めて、施設にアクセスするものの行動管理を併用するので
なければ意味がないと思う。
 そこをどうするかといった議論は完全に欠落している。いくら感染症
専門家を招いて、指導を受けたところで、施設で働く従業員の行動管理が
できていなければ不十分だろう。


 自治体によっては、大規模な検査を実施するという計画を持っている
ところもあるようだし、市中での不特定多数の検査を政府も計画している
ようだ。
 全体的な感染状況を把握するという意味でのサンプリング検査は、それ
なりに意味がないとは言えないが、かなり感染が拡大しているという結果
が出たところで、対策につながる何かが得られるかは疑わしい。
 検査をより有効にするためには、COCOAを拡張した行動記録が取れる
アプリを入れさせた人を増やして、その中からサンプリングするのが、
いいのではないだろうか。
 介護施設や病院など重要な施設にアクセスする人間はもとより、大規模
な施設に入場する場合、感染リスクが高そうな場所に入場する場合、遠方
へ旅行する場合など、アプリへのアクセスを義務付けるようにすれば、
より効果的になるのではないだろうか。


 何かというと、専門家の意見を聴いて決定すると政府は言うが、専門家
は自分の専門分野のことしか言及しないし、専門家といっても政府に受け
のいい人間しか呼ばないので、意見が偏ってしまう懸念がある。
 検査をすることは否定しないが、検査だけで十分とは言えない以上、
そこを埋める方法を考える専門家も入れて検討する必要があると思う。