データに基づいた判断を

 東京都が、まん延等防止措置を取ったものの早々に緊急事態
宣言を出さざるを得ない状況になってしまった。
 まん延等防止措置は、略称でまん防と呼んでいたのが、緩いと
いうイメージなので、使わないようにするとか言っていたが、
そもそも名称ではなく、内容そのものが緩いとしか思えなかった。
 
 去年の国会で法改正をした時に、この措置が加わったのだが、
その時点でも本当に必要な措置を取ることができず、見せかけの
措置でやってる感を出しているようにしか見えなかった。
 何故なら、緊急事態宣言を見てもわかるように、飲食店への
営業時間短縮措置では、効果に限界があるからだ。
 まん延防止の意味からわかるように、感染の拡大の防止を狙って
はいるのだが、飲食がその大きな要因になっているという根拠が
今一つ明確でない。

 東京都が公表している感染原因からも、感染経路不明が5割位
あり、感染経路として明確にわかっているうち、飲食に起因する
のは5%位しかない。多いのは家庭内感染や職場、施設の方だ。
 どこかで感染した人が、家庭や職場等へ持ち込んだのだろうが、
その全てが飲食によるものという根拠はない。
 

 原因と対策がリンクしていないのは、緊急事態宣言も似たような
もので、過去の例からみても、緊急事態宣言を出した時点では、
新規感染者数は、既にピークアウトしている。
 これが何を意味しているかというと、人々の行動は感染が拡大
しているという報道を受けて、既に自粛モードに入っていたという
ことだろう。

 緊急事態宣言は、その自粛行動に追い打ちをするようなものだが、
2か月も続ければ自粛疲れが出てもおかしくない。
 人の行動変容を求めるのであれば、短期強力にすべきだと思う
のだが、それを避けて緊急事態宣言の効果があったと総理が言って
いたのは笑止千万と思ったが、案の定20日ほどでまん延防止措置
となり、さらに再度の緊急事態宣言になってしまった。
 さすがに、ただ宣言をするだけでは意味がないので、どこまで
休業要請をするか検討しているようだが、どこまで効果があるかは
分かっていない。


 問題解決をする際に必要なのは、問題の真の原因が何なのかを
把握し、そのために必要なことを手当てすることだ。
 現状の課題は、感染拡大を抑止し期待される水準まで低下させる
ことなのだろうが、本当にやろうとすれば、2週間他人との接触
禁止してしまえばいい。

 現実には、完全に禁止することは無理なので、どういう条件なら
行動を可とするかを考えればいい。
 例えば、リモートワークは1つの方法だろう。ならば接触を必要
とするエッセンシャルワーカーはどうするか、1つは検査を徹底する
ことだし、1つはワクチン接種をすることだろう。
 また、徹底的な検査と隔離を行い、感染者のいない隔離集団を作る
という方法もある。
 こういった措置を取らずに、中途半端に不要不急の外出をしない
ように要請したり、飲食店の時短要請をしても、効果に限界がある
のは明らかだ。


 多くの業界団体は、感染した実績はあっても、クラスターになった
ことがないので、今のまま営業を続けてもいいのではないかと言うが、
無症状の感染者がどれだけ利用しているかは分かっていない。
 変異ウイルスの影響を考えると、安易にこれまで大丈夫だったから、
今後も大丈夫と言い切れないのではないだろうか。
 もし、大丈夫と言いたいのであれば、人と人が接触する時間が極めて
短時間に抑制できているので、感染者が紛れ込んでも問題ないことを
科学的に証明する必要があるだろう。
 現状は、こういったデータを取る努力が不十分なまま、根拠なく感染
に影響ないと言っていることが多い。
 GOTOトラベルの時も、根拠なく影響ないと言っていたが、データを
集めるという努力はしていなかった。


 これからデータを集めることはできないことはないだろうが、面倒
なのでやりたくないし、それどころではないという気持ちが強いかも
しれない。
 ただ、データに基づかないで判断をしている限り、効果的な対策を
打つことは難しいと思う。それは、専門家と言えども同じで、悪くする
と同じ間違いをする可能性がある。
 もっと程度が悪いのは、現場を見ないで、机上で分かったような判断
をすることで、それをすると昨年のアベノマスクのようなことになって
しまう。
 ワクチン接種をするのに、接種する医療従事者が済んでないにもかか
わらず、高齢者を優先するというのもおかしな話で、現場を見ていれば
こんなことにはならないだろう。

 
 携帯の発信データなどで人の流れは把握できるが、本当に知りたいのは
感染者がどのような動きをしているかだと思う。
 保健所による疫学調査は聴き取りなので限界があり、それが感染経路
不明の高さにつながっていると思う。
 これを打開するには、システム的な手当と法的な整備が必要なのだが、
これができていないことが現在の状況を招いているのだと私は思う。
 ワクチンの効果が出るまでのつなぎをどう乗り切るかということかも
しれないが、データに基づいた判断をする努力は怠ってはならないと思う。