ワクチンピックとリスク管理

 

 今回のオリンピック・パラリンピックは、ワクチンなしには
開催できないので、ワクチンピックと呼んでみたが、どうだろ
うか。
 IOCが、世界のオリンピック選手団に向けてワクチンを確保
したと伝えられたのが、5月上旬のことだったが、それまでは
ワクチンが無くても開催は可能という感じだった。
 ワクチンは奥の手とも言える手段だが、問題はワクチン接種
は義務ではないということとワクチンの効果が現れるためには
2回の接種が必要なため、それだけの期間が十分に取れるかと
いうことだと思う。


 実際に、国によってはIOCが提供するワクチン以外のワクチン
を接種したり、ワクチンそのものの接種を拒否する選手がいる
ことが伝えられている。
 当初から、検査と一定程度の隔離で、安全安心と言っていた
ことからすると、ワクチンを接種することで、より安全安心に
近づいたのかもしれないが、問題は選手以外の関係者やボラン
ティアがどこまで接種を受けられるかということがあった。

 これに対して、東京都は6月26日になって、7万人のボラ
ンティアに対してもワクチン接種の案内を行ったという。
 7万人分のワクチンが、IOCとの折衝の結果なのかは定かで
はないが、ボランティアにもワクチンを打たないと安全安心
とは言えないことを認めたようなものだと思う。
 実際問題として、開会までに有効なワクチン接種がどこまで
可能かは疑わしいところがある。
  ただ、忘れていけないのは、検査にしてもワクチンにしても
100%の有効性が保証されている訳ではないので、数%に
ついてのリスク管理が必要ということである。


 そもそもが、空港検疫での漏れが発覚したように、バブルと
いうのが、どこからどこまでゾーニングされ、関係者のスクリ
ーニングが行われているのか、対外的に明確にされてこなかっ
たし、誰がバブルの維持全体に責任を持っているのかも明確で
ないと思う。
 組織委員会が、空港検疫に関して権限を持つことはありえな
いので、空港検疫は国の問題かもしれないが、各県に分散して
いる会場の管理や事前合宿の受け入れは、各自治体に責任があ
るようなので、そこで感染が発生した場合は、各自治体の責任
になるとしても、バブルとしての全体管理は誰が行うことにな
っているのだろうか。


 IOCは、国際大会の運営実績があるので、バブルにより管理
可能というようなことを言ってはいるようだが、彼らが運営し
て複数競技の複数会場の管理をしたことがあるとは思えないの
で、ある意味机上の議論になっていると思う。
 そのため、組織委員会は直前になって、運営管理の方式を詰
めて、プレイブックの改定だとか観客向けのガイドラインを6
月下旬になって発表するようにしてはいるが、専門家から穴が
あるのではないかということも指摘されている。
 本気になって問題点を解消するのであれば、秘密主義的な方
法でなく、議論をオープンにして広く建設的な意見を求めるべ
きだと思うのだが、そういうやり方は好まれないようだ。


 専門家だけでなく、この感染状況でオリンピック・パラリン
ピックを開催するのが異常だということは、多くの国民が理解
しているのだが、安全安心というばかりで、どこが安全で安心
なのか、責任をもって具体的に説明する人が出てこないのも、
不思議でしょうがない。

 アルファ株やデルタ株の国内流行は、政府の水際対策の不全
を証明しているようなものだが、現時点で水際対策についての
反省や改善を責任者が説明しているとは思えない。
 オリンピックでの水際対策には、多くの例外措置がついてい
るようだが、それについての明確な理由が示されているように
も見えない。
 結局、国内の新型コロナ対策を見ても同じだが、誰かが責任
をもって、こうしますという話はなく、何となく緊急事態宣言
にするとかまん延防止措置にするとか決めていて、実効性のあ
る対策を国民に示すことなく、ワクチンを打ちさえすれば、何
とかなると言っているようにしか見えないのは如何なものだろ
うか。


 オリンピックの開催に伴うリスクを明確にして、それに対応
する措置により、どの程度リスクが低減されるのかを示すこと
が、今、政府や組織員会に求めらていることだと思うのだが、
そういうリスク感覚を持っている人間がいないということが、
現在の日本の現状を示している。
 本当にどうにかならないものだろうか。