自由民主党の総裁選に思う

 

 連日のようにマスコミでは、自由民主党の総裁選に立候補した
議員の討論会などの様子を伝えているが、今一つ関心が沸かない。
 当たり前のことだが、私は党員ではないので、投票権が無いし、
投票権があったとしても、本来の政党としての主張がどこにある
のかを知らないから、総裁が変わったところで、どこがどうなる
のかよく分からないからである。


 現在の政治状況では、衆議院の総選挙を控えてはいるものの、
現有勢力下で、次期総裁が次期総理大臣になることが確実なため、
マスコミも報道熱が入るのだろうが、マスコミサイドのレベルが
高くないため、それぞれを並べて伝えればよしという感じがする。
 前回の衆議院選挙で、マスコミの報道姿勢に自由民主党から
クレームがあって以来、どうも右から左に伝えておけば何も言わ
れないので、それで行こうとしているような気もする。


 一部の政党に偏った報道は、問題があるという人もいるが、
明確な基準がある訳ではないので、各社のスタンスが明示されて
いれば、とやかく言うことはない筈で、それにもかかわらず放送
法を盾に脅しめいた大臣がいたことは忘れていない。
 必要なことは、何が今の日本にとって重要なのか、そのための
政策としてどのような選択肢があるのかを示すことだと思う。
 政治家であれ、マスコミであれ、そういった見識を自らの言葉
で示せる人が必要なのだが、今の日本にはそれが欠けている。


 バブル崩壊後の日本の凋落は、ある意味政治体制や経済体制の
欠陥を引きずってきたようなところがある。
 アベノミクスに対する評価を野党がやったりしているが、今回
の候補者の評価はまちまちなところがあるし、同じような政策を
打ち出している候補はまともな評価をしていないと思える。
 デフレからの脱却ということで、大胆な金融緩和を打ち出した
日銀も、ズルズルと緩和の継続を続けているだけで、物価目標を
達成できずに出口戦略を示せないので、言い訳だけをしているよう
に見える。

 ハッキリ言って、デフレマインドとかいったものは、架空の概
念で、金融緩和でそんなものは払拭できる筈はない。
 デフレを克服するには、所得を増やして消費を拡大させるのが
一番なのだが、そのためには、財政支出より日本経済の構造を変
えGDPを成長させるしかない。
 その点が不十分なままに来ているのに、実績を示せないので、
政権は目先を変えたスローガンで取り繕って来たようにしか見え
ない。


 政府業務のデジタル化だって、20年も前に打ち出した戦略が
進まなかったにも拘わらず、DX化の波に乗って打ち出したもの
の、デジタル庁を作れば進展するかは未知数だと思う。
 組織を作るのも必要だろうが、本来は何をやるかという具体的
な目標や姿を示して、それに向けた組織を作るべきだと思う。
 また、新型コロナへの対応を見ても分かるように、組織はあっ
ても、それをマネージし判断する人の力量がないと迷走してしま
うし、システム以外の法律やルールの整備も並行して行わないと
うまくいかないことが多い。
 デジタル化は、うまくやれば生産性の向上につながるし、透明
性も確保できるのだが、組織を運営する人間のコンプライアンス
レベルが低いと、グズグズになって崩壊していくような気がする。


 日本の場合、コンプライアンスを重視したチェックアンドバラ
ンスという仕組みが根本的に未整備なため、合理的な意思決定や
判断ができないという欠陥があると思う。
 将来の日本のためには、憲法改正以前に、現状の全ての問題点
を整理し、何を整備していくべきかという視点を議会もマスコミ
も持つべきだと思うし、そのための人材の養成も必要だ。
 総裁選の報道も、現状の棚卸しをしないで、単に右から左へ流
すのだけは止めてもらいたい。
 政界もマスコミ界も人材不足に見えるのは、私だけだろうか。