そばは、大盛りがいい

今週のお題「盛り」

 

 お題の盛りと言われて浮かんだのは、「もりそば」だ。蕎麦屋で食べる
「もりそば」を見ても、それほど盛ってあるようには見えないし、神田のやぶ
そばは、盛ってないせいではあるまいが「せいろそば」と称している。
 ところが、地方によっては山盛りにして出してくるところもあるようだ。

 今から数十年前のこと、妻と結婚する前にドライブしたのだが、早めの
夕飯にしようと石和の蕎麦屋に入った。
 そこの蕎麦屋は、もりそばが食べ放題ということで、まだ若かった二人は
もりそばを注文したのだが、出てきたのはザルに山盛りになった蕎麦だった。
 私もそばは嫌いではないが、食べ放題と言われても追加をするまでには
至らなかった。ところが、妻は蕎麦好きということを言っていただけでなく、
そばならいくらでも食べれると言って、追加注文をした山盛りをぺろっとたい
らげてしまった。その食欲には感服するしかなかった。

 当時は、まだ中央自動車道が全通していなかったため、途中石和で
寄ることになったのだが、今は全通しているため、寄る機会もなくなってし
まったのだが、今回のお題を機に、また行ってみようかと考えている。
 調べてみると、店は無くなってはいないようだが、当時のような山盛りで
出てくることはなく、ごく普通の量のようだが、食べ放題のメニューは残って
いるようだ。
 当時ほど若くはないので、食べ放題に挑戦するかどうかは怪しいが、
思い出が蘇ってくるといいなと思っている。

 そばで沢山食べたという思い出は、岩手で「わんこそば」を食べた時が
ある。その時は家族で行ったのだが、子供はまだ小さかったにもかかわらず
100杯くらい食べていた。血筋は争えないのだろうか。
 「わんこそば」は、椀の蓋をしないと仲居さんが次から次へそばを入れて
くるので、半ば強制的に食べてしまうのだが、同じ「わんこそば」でも平泉
地方のは、お膳に椀がずらっと並んで出てくるので、自分のペースで食べる
ことができる。
 それでも、量にすると結構なものを食べている。「わんこそば」は、椀が
積みあがって、気分を盛り上げるところが面白い。

 「わんこそば」とは違って、出雲そばは割子が積まれて出てくるのだが、
これも沢山食べる人は盛り上がってくる。椀のようにどんどん積み上げる
ようなことはしないのだが、結果として割子の山がいくつも出来てくる。
 そう言えば、昔の蕎麦屋の出前では、盛り蕎麦の容器を山のように
積み上げて、片手に持ちながら自転車で運んでいたのを思い出した。
 今は、出前もオートバイの後ろに載せていくので、そういった風景も見ら
れなくななってしまい、それを知る人も少なくなったのではないだろうか。
 アクロバティックな出前は、昭和の風景として記憶にとどめておきたい。